世界最大の石油産出国である米国は積極的ではありませんが、欧州を中心とした先進各国では脱石油の動きが活発になっています。脱石油はかつては夢物語と言われてきましたが、太陽光パネルのコストが下がったことや、ITを使って効率良く電力管理する技術が整ったことから、実現可能な領域に入ってきました。

2019年にポーランドで行われた、レジ袋の使用に抗議する〝脱プラスチック″デモの様子。 写真:EASTNEWS/アフロ

プラスチック容器やレジ袋といった石油由来の資源のみならず、発電目的での利用など、あらゆる分野において脱石油を進めるというのが国際社会の流れであり、石油由来の資源の中で効率が良い悪い、あるいは比率が高い低いという話には意味がないというのが基本的認識です。

 

今年1月に開催された世界経済フォーラムの年次総会(通称ダボス会議)において、日本はペットボトルの再生技術をプレゼンしましたが、まったくといってよいほど評価されませんでした。各国はペットボトルを含む石油由来資源の廃止を議論しており、石油を使うことを前提に効率を上げるという話はピントがズレていると認識されたのです。

日本は同様に、効率の高い火力発電所の開発を行い、この技術を通じて「世界における気候変動問題への対応をリードする」(安倍首相)としていますが、この方針についても一部から批判が寄せられています。もうお分かりだと思いますが、火力発電そのものを廃止しようという議論の場に、火力発電の効率化を主張しても意味はありません。

筆者は、レジ袋の有料化には実質的な効果がないという指摘は間違っていないと思います。しかし、脱石油が至上命題である国際社会において、レジ袋の有料化は無意味と主張しても、ほとんど効果がないのもまた事実です。

日本政府が国際社会(米国を除く)の流れと方向性を合わせるという方針ならば、火力発電やペットボトルの廃止も含めた総合的な脱石油の提言ができなければ意味がありません。一方、こうした流れとは決別し、米国のように石油に依存する独自路線を歩むのであれば、諸外国を力でねじ伏せる強大な政治力が必要となります。しかし、今の日本にそうした力がないのは明白でしょう。

もっともよくないのは、表面的には世界各国と歩調を合わせるかのように振る舞い、実際には脱石油を進めないというパターンです。場合によっては公約違反であると国際社会から激しい批判を浴びる可能性も否定できません。国際社会と歩調を合わせ脱石油を進める場合でも、石油依存を続ける場合でも、自らのスタンスをはっきりする必要があるのは同じです。中途半端な姿勢は弊害をもたらすばかりです。

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