もっとも基本的な手法「呼吸の瞑想」


次に紹介する呼吸の瞑想では、楽な姿勢で、呼吸中の体の動きに意識を集中。呼吸を通じて体の感覚に気づき、よけいな思いや考えに反応しないようにします。基本的な手法ですが、初心者は先に食べる瞑想や飲む瞑想で、感覚に意識を向けることを経験しておくと、呼吸の瞑想にもとりくみやすくなります。

最初は、呼吸だけに集中し、心を落ち着ける形式でおこなう一点集中のサマタ瞑想にとりくみましょう。鼻の穴かお腹に意識を集中し、空気の出入りを感じます。体のこりや痛み、物音など、ほかのことは放置してください。すべての注意を呼吸に向けると、心が落ち着いてきます。

 

 

<呼吸の瞑想:一点集中のサマタ瞑想の基本手順>

① 楽な姿勢をとって
呼吸に10分集中するので、その間に体へ負担がかからないよう、楽な姿勢をとる。ただし休憩ではないので、背もたれは使わない。

② どこか一点に集中
鼻の穴かお腹に意識を集中。その感覚に気づく。集中すると心地よさを感じてくる。

③ ほかは放っておく
「食べる瞑想」と同様に、さまざまな感覚や考えも浮かんでくるが、それは実況中継しなくてよい。すべて放置する。

一点集中が体験できたら、今度はヴィパッサナー瞑想(呼吸に集中しながら、呼吸以外の感覚やさまざまな思いも受け止める瞑想)にとりくんでみてください。呼吸に集中しながら、そのほかの感覚や思考もしっかり観察し、それらを認識しながらも、呼吸へ注意を向け続けます。

 

<呼吸の瞑想:呼吸以外の感覚も観察するヴィパッサナー瞑想の基本手順>

① 体の感覚に気づく
鼻の穴やお腹に集中。呼吸中の体の動きを通じて、体の感覚が一瞬ごとに変化することに気づく。ここまではサマタ瞑想と同じ。

② いろいろ考えてしまう
集中しようとしても「うまくできているかな」「あの仕事が残っている」などと、いろいろな思考がわき出てくる。

③ 気づいてもう一度集中
考えてしまってもかまわない。「考え」と実況して、それ以上考えこまず、呼吸にもう一度集中する。

④ 痛みなどを感じてしまう
体の痛みやかゆみ、しびれ、物音、食べ物のにおいなどで気がそれることもある。

⑤ 受け止めてまた集中
呼吸以外の感覚を受け止めるのも重要。「痛み」などと実況し、それ以上反応せず、呼吸中の体の動きに集中する。

こうすると、呼吸に集中することが、意識の中心になってきます。なにか考えが浮かんでも惑わされず、いつでも呼吸に意識を戻せるようになります。それは心の基礎体力となり、日常生活でもよけいな考えに振り回されなくなるのです。

呼吸の瞑想はマインドフルネス瞑想のベースになる手法です。この瞑想で体の感覚や思考に気づく経験を積んでおけば、ほかの瞑想にもとりくみやすくなります。呼吸を手がかりにして、感覚の変化を感じましょう。呼吸から気をそらせるものを認識し、放置することで、心の働きが整理されていきます。