高齢者の「フレイル」という問題

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一つ目は、「フレイル」と呼ばれる問題です。「フレイル」という言葉はあまり聞き慣れないという方も多いかもしれません。

フレイルとは、加齢とともに多数の生理的機能や予備能力が低下することによって、さまざまな外的ストレスに対する脆弱性が増加した状態のことを指します。

フレイルの状態にある高齢者は、日常生活動作が低下し、転倒や骨折のリスクが増加することが知られています。このフレイルは、早期に原因を特定し介入をすれば回復を見込むことができますが、手遅れになると、ある段階から回復の見込みのない状態に陥ってしまいます。

コロナ禍の高齢者はどうでしょう。普段ならデイサービスやリハビリに出かけたり、買い物に足を運んだり、友人との約束で外出をしたりという機会があった方も多くいらっしゃったでしょう。しかし、感染リスクから外出の機会がめっきり減り、足腰がすっかり弱くなってしまったという方も見られます。

また、若い世代とは異なり、タブレットやスマートフォンを使いこなす方の人数も少なく、外出の減少はすなわち社会との断絶を意味するというケースも少なくありません。電話だけが頼りで、メールやLINE、SNSでの交流の機会はなく、コミュニケーションの機会が格段に減っている方も数多くいらっしゃいます。

こういったコミュニケーションの頻度の低下は、認知機能の低下に拍車をかけ、抑うつ状態をもたらすことにもつながります。

このような、身体的、精神的、認知的な機能低下が相互に足を引っ張り合い、フレイルが急速に進行するケースが散見されています。

コロナウイルス感染症から身を守ることができたとしても、フレイルが進めば、結果として短期的にも長期的にも、生活の質を低下させ、ひいては人としての最低限の生活や命を奪うことにもつながってしまうのです。

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「慢性疾患の治療中断」という問題


もう一つ懸念されているのが、慢性疾患の治療中断、という問題です。高血圧や糖尿病は慢性疾患の代表格ですが、こういった病気は感染症や心筋梗塞などといった比較的自覚されやすい病気とは異なり、症状に乏しく、病気の存在が感じられにくいものです。このため、治療の必要性も自覚しにくいのです。

こういった病気の治療は、現在の自分の体調をよくするためのもの、というわけではなく、数ヵ月後、数年後の自分を守るための未来への投資です。今、体の不調を感じていなくても、治療をやめてしまうことで数ヵ月後や数年後の自分の心筋梗塞、脳梗塞の発症率が上昇する。そのことが十分すぎるほど分かっているので、「今、大丈夫」でも治療をし続けなければならないのです。

しかし、「ウイルスが怖いから通院をやめた」「身体がなんともないから治療はやめている」といった声も聞かれます。

こういった治療の中断による影響はこの数ヵ月で出るとは考えにくいですが、1年や2年が経過した後に、病気の発症率の上昇として出てきてしまうものと考えられ、一人の医師としてとても心配をしています。

「何も変わりないのに、なぜ薬を飲まなくてはいけないのだろう」そんな風に言われてしまうこともありますが、治療を淡々と続けることがとても大切な場合もあるのです。

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