両親や祖父母のためにできる4つのこと

 

新型コロナウィルス感染症から、両親や祖父母の命を守ることはもちろん大切なことですが、そればかりに気を奪われ、頭でっかちになってはいけません。

それぞれのリスクを分析し、バランスよく対策をすることが大切です。コロナウイルスには感染しなかったものの、脳梗塞を発症して寝たきりになってしまった、というのでは後悔してもしきれません。

まず、先のフレイルの話に戻れば、高齢の両親や祖父母に、外出、散歩を勧めるということも時には必要かもしれません。気候的にも涼しい早朝や夕方に、人通りの少ない場所を散歩する場合、感染リスクはほとんどありません。新型コロナウイルスの感染は、あくまで人から人へ生じるのです。Stay Homeの言葉は、「自宅の外=リスク」の認識を与えましたが、リスクは決して場所では決まりません。なんでもかんでも自宅にいれば良いわけではなく、手指消毒などの基本的な感染対策に気をつけながら、定期的な運動をすることでフレイルは予防することができます。

また、積極的にコミュニケーションをとることも大切です。タブレットをプレゼントし、定期的にテレビ電話をするというのも良いかもしれません。そういった家族、社会とのつながりが認知機能や精神衛生の維持につながります。

慢性疾患という側面では、まずは最低限の病院受診を勧めることをお願いしたいと思います。今体調がいいことと、未来の自分の健康というのは必ずしもイコールではなく、多くの慢性疾患は未来の自分のための治療であることをぜひお伝えください。

また、物理的な受診にどうしても抵抗があるという方に対しては、電話受診やオンライン受診も普及しています。仮にオンラインには障壁があったとしても、電話ならば多くの高齢者にも馴染みがあり、受診もより現実的なのではないでしょうか。電話受診と処方箋のファックス送信を組み合わせることで、自宅にいながら薬の処方を受けることが可能となっています。

実際、慢性疾患の管理は、電話による体調チェックや血圧管理、副作用チェックなどで済む場合も数多くあります。そのような選択肢があるということを知るだけでも、ご両親の行動は変わるかもしれません。

そしてこれからの時期、何より大切になるのが予防接種です。もしあなたに65歳以上のご家族、ご親戚がいらっしゃれば、肺炎球菌と呼ばれる細菌に対する予防接種を受けることをぜひ勧めてみてください。肺炎球菌は、肺炎の最も頻度の高い原因微生物です。この原因微生物から体を守る方法があるのです。コロナウイルスのワクチンはまだなくとも、肺炎のワクチンはあるのだということをぜひ教えてあげてください。

もう一つ大切なのが、インフルエンザワクチンです。インフルエンザは今年もほぼ間違いなく流行することになるでしょう。10月や11月になれば、インフルエンザワクチンの供給が始まるはずです。インフルエンザワクチンは生後6ヵ月以上のすべての方に適応になります。流行期前に確実に接種しておくことで、感染率や重症化率を低下させられることが分かっています。

コロナウイルスの重症化を防ぐワクチンは残念ながらまだありませんが、私たちには、身体を守る方法がすでにたくさんあります。ないものを嘆いていても仕方がありません。今できることを確実に行うだけでも、あなたのご両親や祖父母を守ることにきっとつながるのではないかと思います。

今日改めて、遠方に住むご家族に電話をかけてみませんか。

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参考文献
1. Verity, R. et al. Estimates of the severity of coronavirus disease 2019: a model-based analysis. Lancet Infect. Dis. (2020). doi:10.1016/S1473-3099(20)30243-7
2. Wu, Z. & McGoogan, J. M. Characteristics of and Important Lessons from the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China: Summary of a Report of 72314 Cases from the Chinese Center for Disease Control and Prevention. JAMA - Journal of the American Medical Association (2020). doi:10.1001/jama.2020.2648
3. Jeanne Ross, Weill Peter, R. & David. OpenSAFELY: factors associated with COVID-19-related hospital death in the linked electronic health records of 17 million adult NHS patients. J. Chem. Inf. Model. (2006). doi:10.1017/CBO9781107415324.004