撮影/岩田えり

まさに、大森南朋の新・ハマリ役といえるナギサさん。でも彼がこのように“カッコ良さゼロ”の役を演じることは、これまでほとんどなかったことだけに、正直、スタート前は一抹の不安を抱いていたのも事実。美味しいとわかっている名店のあのひと皿が封印されたかのような……。

 

こう言っては何ですが、大森南朋はハッキリ言って“雰囲気イケメン”です。丸顔にクリンとした大きな目。今作でもエプロンをした姿が「クマちゃんみたいでかわいい♡」と盛り上がっているように、ルックスだけ見ればナチュラルボーン・イケメンとは言い難いかもしれません。それが先にも申し上げたように、ひとたび演技をすれば得も言われぬ色気を放つのであります。そして気づけば、もうイケメンにしか見えなくなっているのです。

それだけに今作のナギサさんのように、色気ゼロの役で大丈夫なのだろうか……。私はそんな心配をしてしまったわけです。が、始まってみて大いに納得しました。だからこそナギサさんは大森南朋だったんだ!と。

第3話を終えて、メイは晴れてナギサさんを正式に家政夫として雇うことに。さて、ここからメイとナギサさんの関係がどうなっていくのか……。
実際の展開は分かりませんが、やはり視聴者として期待するところは胸キュン以外の何でもないでしょう。そこでの大森南朋なのです! 

というのも、これがたとえば西島秀俊や竹野内豊なら、たしかに年齢的にはおじさんですが、カッコ良すぎて普通にメイとの恋愛があり得そう、と最初から想像してしまいます。
大森南朋が演じているところの、「頑張らなくてもいいんだ」と100%無防備になれるような“お母さん感”は生まれないでしょう。かといって“お母さん感”を重視しすぎたキャスティングでも、今度は胸キュンが難しくなる……。だけど大森南朋なら、“お母さん”でありながら、小さじ一杯分の男の色気が残っているのです。これこそが、ナギサさんが大森南朋でなければならなかった最大の要因だと私は思うのですよ。

これまでは、どちらかというと色気を、静かながらも抑えきれていなかった大森南朋。しかし48歳になって、その色気の出し入れも自在にできるようになった。彼の演技力がその極みにまで達したからこそ、ナギサさんは想像以上の好評を得ているのではないでしょうか。このドラマを機に、“イケおじ”でも“癒し系おじさん”でもない、新しい“母おじさん”なるブームがくるかもしれません。そんなことも含めて、今後も大森南朋のナギサさんから目が離せません!


あらすじは公式サイトでチェック!>>

動画配信はこちら>>

文/山本奈緒子
構成/藤本容子
 

 


前回記事「名作ドラマ『愛していると言ってくれ』が、私たちの心を掴んで話さない理由」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

ライター 渥美 志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、コスモポリタン日本版、withオンラインなど、ネット媒体の連載多数。食べること読むこと観ること、歴史と社会学、いろんなところで頑張る女性たちとイケメンの筋肉が好き。寄稿中の連載は、
「yahoo!ニュース」『アツミシホのイケメンシネマ』
「COSMOPOLITAN」日本版『女子の悶々』
「COSMOPOLITAN」日本版『悪姫が世界を手に入れる』
facebook @atsumishiho
twitter @atmsh_official

ライター 山本奈緒子
1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。

 
  • 1
  • 2