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話題の癒しスポット!表参道の空に浮かぶ“循環する”菜園【野村友里さん】

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表参道のちょうど真ん中。
ブランドショップが軒を連ね、常に流行の最先端を発信し続けるこの街の空の上に、“畑”があると聞いたら、あなたは信じられますか?

 

複合ビルGYRE(ジャイル)の4階に、昨年11月にオープンしたばかりの「eatrip soil(イートリップ・ソイル)」。レストランeatripを主宰する料理人・野村友里さんが手がけるグロッサリーショップです。まるで蔵のような店内の奥へ入っていくと……。

 

こんなにも緑豊かな畑が!
さっきまで表参道の街を歩いていたはずなのに……、まるで知らない世界に迷い込んでしまったかのよう。

 

地価だってものすごく高いだろうに、なぜこんな都心のビルの中に畑が? ここではいったい何を育てているの? とっても気になります……!

2020年のはじめにGYRE FOODとしてリニューアルオープンしたばかりの表参道GYREの4階。ミシュランの星を狙うような高級レストランからカジュアルレストラン、バー、コーヒースタンド、そしてこのeatrip soilまでが境目のない開放的な空間でつながっています。フロア全体のテーマは“循環”。野村さんは総合ディレクターのひとりとして、GYRE FOOD全体の空間づくりやコンセプトから携わってきました。

どうしてここに畑があるのか。その答えは“循環”というテーマを紐解くと見えてきそう。お店の主人である野村さんに伺いました。
 

たくさんの食材に触れてきて、結局“いい土”が必要だと気づいた

 

店の奥にあるガラス戸を開け表に出ると、鼻にぶわっと飛び込んできた土と緑の匂い。

広さ12畳ほどのテラスには、ディル・レモンバーム・ローリエなどのハーブから、野いちご・木苺・ピーマン・セロリなどの野菜、グリーンカーテンのヘチマまで約40種類もの植物がところ狭しとその体を太陽に向かって伸ばしています。

「野菜もハーブも一番収穫できるのは5月ごろで、もうずいぶん刈り取ってしまった後なんです」。その言葉が信じられないほど、緑たちは元気いっぱい。ビル内の菜園というとベランダのプランター菜園のようなものを思い浮かべてしまいますが、ここはテラスいっぱいに30〜40cmの土が敷かれた立派な畑です。

「実はこの菜園の目的は、野菜を育てるというよりもコンポストでおいしい土をつくることにあるんです。私自身、世界でも国内でもたくさんの食材に触れて、多くの生産者さんにお会いしてきたんですけど、結局おいしい土がないとすべてが始まらないということに行き着いて

いい土がないと芽が出ないし、いい種も採取できない。野菜もハーブも土の中ですべて育つものなので、お布団みたいなものなんです。ケミカルだったり、腐敗して匂いがあるようなお布団で寝たくないですよね。だから、私は家庭菜園のプロフェッショナルではないんですけど、いい土をつくっていい種を採る“循環”の実験をしたくて始めたんです」

セロリの種を採る野村さん。下にある木箱がコンポスト。

この菜園で採れた野菜やハーブは、GYRE FOODの中で循環しています。レストランの料理に使われて、そこで出た生ゴミが戻ってきて、コンポストで肥料になり、また次の野菜を生み出す土へ。

「この菜園が第一次産業。このフロアにはメゾン的な高級レストランもあって、金額でいったらこのお店で売っているものとは桁が2つ3つ違うけれど、出発点はここのハーブやスパイス。すべてつながっているんです」

フランス・ロアンヌの名店「トロワグロ」や銀座の3つ星レストラン「ロオジエ」でフレンチの経験を積み、銀座「エスキス」でスーシェフを務めた信太竜馬(しだ・りょうま)さんも、野村さんと想いをともにするひとり。高級メゾン「élan(エラン)」をオープンし、GYRE FOODのコンセプトのもとに料理人としての確かな腕をふるっています。

食材だけでなく、人と想いが循環しているのもこのフロアの大きな魅力です。

腐敗を防ぐため、生ゴミはしっかり乾燥させてからコンポストへ。籾殻や3年ものの落ち葉などと一緒に発酵させ肥料をつくる。
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