めまいを引き起こす病気/良性発作性頭位めまい症(BPPV)

 

それではまず、代表的な原因疾患である良性発作性頭位めまい症(BPPV)という病気をご紹介します。この病気は、文字通り良性の病気であり、直接命に関わることはありませんが、症状が出ると厄介な病気でもあります。

このめまい症では、先ほどご説明した内耳という場所にカルシウムでできた泥のようなものが溜まってしまっていることが知られています。この泥があると、液体だけが溜まっている時よりも高い粘性や重みがあり、流れが増幅されやすくなります。その結果、信号の大きさと実際の体の傾きにズレが生じ、めまいが生じてしまうのです。

50代や60代の方に多いとされていますが、若い方に起こることもあります(参考2)。若い方では、頭をぶつけたなどの怪我がきっかけになりうることも知られています。この病気によるめまいは、寝返りを打ったときや振り向いたときなどに「発作」的に起こるので、良性発作性頭位めまい症という名前がつけられています。じっとしていれば泥も動きようがないので、めまいは起こりません。一方、体位を変えると突然めまいが生じることになります。めまいは通常、秒単位で続きじっとしていれば自然に消えていきます。患者さんからお話を伺い、このあたりの情報が揃ってくると、「どうやらBPPVらしい」と分かります。

メニエール病


対して、先ほどゴッホとともにご紹介したメニエール病という病気も、良性の病気ではありますが、こちらは体位などに関わらず、自然にめまいが生じます。発作的に反復性に生じるところはBPPVと同様ですが、時間単位で持続する点が異なります。また、この病気の大きな特徴は、難聴や耳鳴りを伴うという点です。このメニエール病は、内耳の中を満たす液体が何らかの理由で増え、内圧が高まることで生じると考えられていますが、原因の詳細は未だ不明なままです。

前庭神経炎


また、ウイルス感染で生じる前庭神経炎という病気でもめまいが生じます。この病気の場合には内耳につながる神経に炎症が生じ、誤った信号が伝達されてしまうのです。風邪症状が生じた後に、比較的急速にめまいが起こるのが特徴です。BPPVやメニエール病では1日の中で症状が出たり消えたりするのとは異なり、まっすぐ歩けないなどの症状が数日単位で続くため、そこで区別がつけられることになります。逆に、しばしば症状だけだと、脳梗塞などと区別がつきにくいこともあります。