脳梗塞、脳出血

 

その他に、脳梗塞、脳出血などでもめまいが生じることがあります。この場合、めまいの他に、力が入りにくい、まっすぐに歩けない、ものが二重に見えるなど、神経の症状を伴うことになります。また、脳の病気によるめまいの場合には、体位変換などの明らかな引き金はなく、発症したらずっとめまいが持続するという点でBPPVやメニエール病と区別されます。これらの病気はいずれも緊急性の高い疾患ですので、めまいの他に「手足の力が入りにくい」「呂律が回らない」などの症状を伴うようでしたら、すぐに病院を受診していただく必要があります。

薬の副作用という可能性も


これらの病気の特徴の違いからなんとなくお分かり頂けたかもしれませんが、症状の出るタイミング(発作的か持続的か)や引き金になったイベントなどの情報が適切な診断を得る上でとても重要です。

ちなみに「引き金」といえば、めまいは薬でも生じえます。例えば、花粉症の薬や睡眠剤、かぜ薬など身近な薬でもめまいが生じます。私自身、「かぜはよくなったのに、めまいが出るようになった。調子が悪い」と相談に来られた患者さんに何度も出会っています。それらはいずれも風邪薬の副作用という診断に至りました。振り返ってみて、最近始めた薬のせいでは?と疑ってみることも大切です。

検査ではわからない。めまいの診断


病気の「診断」というとすぐに「検査」と結びつきがちですが、めまいの原因の診断には、多くの場合、血液検査や画像検査などは不要であり、仮に検査を行ったとしても徒労に終わってしまいます。過去の4000名以上のめまい患者についてまとめた報告では、たった0.6%でしか検査結果が診断に役立たなかったことを報告しています(参考3)。

むしろ、これまで説明してきたように、めまいが生じてから病院にたどり着くまでのストーリーが診断上最も有用ということになります。なので、病院では面倒だと思わず、医師からのたて続けの質問に丁寧に答えていただくことが診断上大切になります。

また、身体診察もとても重要です。先ほど脳梗塞や脳出血では神経の症状を伴うと書きましたが、眼振と呼ばれる目の揺れ方のパターンや筋力の具合などを診察して、脳梗塞らしさを評価することができます。脳出血や脳梗塞が疑われた場合には、CT検査やMRI検査が有用になります。

加えて、メニエール病では難聴を伴うことがありますので、耳鼻科での聴力検査が診断の鍵になることもあります。