安倍首相が辞任を表明しました。体調不良の原因ともなった、潰瘍性大腸炎とは、どのような病気なのでしょうか。山田悠史先生に聞きました。

 



潰瘍性大腸炎とはどんな病気なのか


――潰瘍性大腸炎とは、どのような病気なのでしょうか?

潰瘍性大腸炎は、国が定めた「指定難病」のひとつです。遺伝的な要因なども推定されていますが、発症する原因はまだ明確にはわからず、完治させる治療法もまだありません。潰瘍性大腸炎にかかると、自身の免疫が自分の大腸を攻撃してしまい、下痢や血便、強い腹痛や発熱といった症状を引き起こします。また、大腸のみならず、皮膚や目など全身の様々な臓器に合併症を引き起こすこともあります。

首相の場合は、10代の頃からこの病気と付き合っていると聞いています。好発年齢は15歳から30歳頃と言われていますが、小児で発症するケースもありますし、50歳以上で発症することもあります。よくなったりわるくなったり、またよくなったり、そんな病気です。軽症で止まる方も多いですが、お歳とともに重症度が悪化していってしまう方もいます。

第二次安倍政権では、非常に精力的に活動されていた印象がありますが、潰瘍性大腸炎には、症状が強く現れる「活動期」と、症状が治まっている「寛解期」があります。最近は、少し痩せられて顔色も冴えない様子でしたから、かなりつらい状況が続いていたのではないかと推測します。

 


この病気は、症状に加えて血液検査や大腸内視鏡検査の結果などを参考に診断を行います。通院での治療が多いですが、入院して治療をしなければならないこともあります。治療は、投薬が中心ですが、手術を選択するケースもあります。十分自己管理されていたり治療をしっかりしていても悪化するケースもあり、なかなかコントロールしにくいこともある病気です。

治療として免疫を抑えるような薬を用いることがあったり、悪化時には発熱など新型コロナウイルス感染症と重なる症状を出したりすることもあるため、この病気をお持ちの方は心配な時期をお過ごしのことと思います。

一方で、適切な治療を受ければ、すぐに命にかかわる病気ということではなく、定期的な検査や治療は必要になりますが、寛解期であれば、仕事や家庭生活も普段通り過ごす事ができます。悪化時にも、様々な治療の選択肢があり、十分病気と付き合う方法を見つけられます。また、女性の患者さんは妊娠や出産も可能です。

記者会見で首相は、「体調不良のために政治的判断に誤りがあっては困る」という旨の発言をされていました。首相は辞任となりますが、議員としての活動は続けられるということでした。しばらく静養し、また元気な姿を見せていただくことができれば、同様の病気をお持ちの方には希望となることでしょう。回復をお祈りしたいと思います。
 

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