「片づけが苦手」というのはADHDの人共通の大きな悩みのようです。

「片づけなくちゃ」と考えるとき、モデルルームのような部屋を頭に思い描いていないでしょうか。それが「めんどう」のもと。目標のハードルを下げましょう。

 

めざすのは、美しい部屋ではなく機能的な部屋です。見た目に散らかっていなければOK。ものがパッと取り出せるなど、使いやすい部屋であることが重要です。
 
まず、「片づけたい」と口に出して、やる気をもりあげます。
 
片づけ作業は小さく簡単にします。一気に部屋全体を片づけようとしないで、棚の一段だけ、あるいはペットボトルだけなどと、ターゲットをしぼります。
 
ごほうびを用意して、短時間集中でとりかかります。

そこまでできたら、「できた!」と、自分をほめましょう。
 

 

【ADHDの人の片づけのポイント】


●「すてきに」「美しく」をめざさない
片づけるといいことをイメージして、「片づけたい」と口に出します。流行の「見せる収納」や、おしゃれなグッズを部屋のあちこちに置くなど、ハードルを高くするのはやめましょう。管理しきれなくなって、散らかるもとになります。

●アイテムかエリアをひとつだけ
もっとも問題になりそうなものや、目立つものから片づけましょう。食べかけのお菓子、テーブルの上など、食べ物や飲み物関連から始めるのがおすすめです。

●ものを減らす
片づけるときには、捨てる、売るなどして、ものを減らすようにしましょう。ADHDの人は、ものが多すぎるのも、片づけられない原因になっています。とっておくものは定位置を決めて置きましょう。

理想を求めてがんばり、挫折感を味わうのはもうやめましょう。家事は省力化できます。例えば、料理は毎食完璧につくらなくてもお惣菜を買って、具の多いみそ汁をつくるなどの「中食」でいいのです。家族仲良く食事をすることのほうが大切です。
 
忙しいときは使い捨ての紙皿や紙コップでいいとしましょう。そうじや片づけは、いざとなればプロに頼むこともできます。子育て期は、そうじや片づけより子ども優先です。

ADHDの人は、できない自分がダメだと思い、なんとか「正しい」やり方にしようとします。でもそれは、「ほかの人の」やり方ではないですか。自分に合ったやり方なら、できるはずです。

ADHDではない人でも苦手なことはあるし、失敗もします。自分だけがそんなにダメなわけではないのです。今の自分を認めてあげましょう。
 

『ADHDの人の「やる気」マネジメント 「先延ばしグセ」を「すぐやる」にかえる!』
監修:司馬理英子 講談社 1540円

自身も4人の子供をもつ司馬理英子先生。仕事はもちろん、ADHDの人が家事でも「やる気」モードを引き出すにはどうすればいいか、がんばりすぎないための具体的なテクニックを教えてくれます。


構成/金澤英恵