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2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?

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一方で性交はなくても男性は性欲がある


パートナー(恋人や結婚相手)以外とのセックス状況についての質問では、男女共にどの年代でも特定の1~2名とはしている人が2~4割は存在していました。浮気と決めつけることはできませんが、他でセックスはしているということです。

さらに、男性にはセックスと射精回数の頻度を聞いたユニークな質問では、「セックス回数=射精回数である(23.9%)」は少数派で、自慰や夢精、性風俗利用などで、「セックスの回数よりも射精する回数の方が多い(36.2%)」、「セックスはしていないが射精はしている(39.9%)」と、男性の性欲が消え失せたわけではないことがわかりました。

「この結果と同様に、私のクリニックで若い男性の話を聞くと、セックス嫌いの若い男性は増えています。女性を口説くのにかけるお金がないし、気を遣うのも疲れる。性欲解消なら責任を負わないセックス、例えば2次元でも充分な感じです。セックスより楽しいことが世の中に増えすぎているのも、セックスレスに拍車をかけています。

イギリスの動物学者であるデズモント・モリスは触れ合いの12段階を定義しています。目から体、目と目、声から声と徐々に発展して、相手に否定されながらも、手から手、口から口、というように触れ合いが進行し、12段階目でようやくセックスに辿り着きます。握手やハグといったちょっとしたセクシュアルなコミュニケーションのステップを踏んで、親密度を深めて辿り着くセックスは、日本人にとってハードルの高いものになっているのかもしれません」(北村先生)。

女性がしたくないのはセックスの満足度が低いから!?


「セックスに関して悩みごと(コンプレックスなど)はありますか」(複数回答)で、女性の54.1%が「特にない」と回答したものの、女性では、「オーガズム(絶頂感)に達することができない」(21.5%)、「快感が得られない」(15.0%)を挙げています。

 

「セックスの悩みで女性はオーガズムに達することができないと答えていますが、そもそもオーガズムとは一律に定義できるものではありません。オーガズムについて性科学者であるマスター博士とジョンソン博士が定義しているのは、肛門括約筋が約0.8秒間隔で4~8回収縮し、このとき女性は絶頂感を味わうとされています。

 

男性の性反応は、興奮、勃起、射精と一律ですが、女性は実に多様です。興奮期、オーガズム期、消退期があり、ダラダラとオーガズムを経験して終わっていく人、興奮が急に登りつめて落ちていく人などパターンは千差万別。人によって違うので、悩む必要はありません。
そもそもセックスでオーガズムを経験できると思わないほうがいいです。
他人同士の行為なので気持ちよかったら儲けものぐらい、ハードルを下げて考えるべき。

本来は愛を育む営みであったセックスが、日の当たるところでは蓋をされ、陰では過激でアブノーマルなものが出回っています。性が忌まわしいもの、面倒くさいものとして誤解されているのは実に危険」と北村先生は警告します。

次回は、間違った情報で闇雲にセックスを遠ざけないためのポイントを北村先生に伺います。

北村邦夫

群馬県渋川市に生まれ。自治医科大学を一期生として卒業後、群馬県庁に在籍するかたわら、群馬大学医学部産科婦人科教室で臨床を学ぶ。1988 年(昭和 63 年)から日本家族計画協会クリニック所長。現在一般社団法人日本家族計画協会会長/理事長/家族計画研究センター所長、日本思春期学会名誉会員、日本母性衛生学会常務理事など。著書には「ピル」(集英社新書)、「セックス嫌いな若者たち」(メディアファクトリー新書)。「ティーンズ・ボディーブック(新装改訂版)」(中央公論新社)、「入門百科プラス 女の子、はじめます。」(小学館)、「みんなこうなるの? おとなになるためのベストアンサー 71 の Q&A」(講談社)など多数。現在、毎日新聞で「Dr.北村が語る現代思春期」、朝日新聞アピタルで「あなたを守る性のはなし」連載中

取材・文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)

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