安倍内閣は9月16日午前の臨時閣議で総辞職。安倍氏の首相在職日数は第1次政権を含む通算で3188日、第2次政権以降の連続でも2822日と、いずれも憲政史上最長となった。写真:AP/アフロ

安倍前首相の辞任に伴い、あらたに菅内閣が発足しました。菅氏は安倍政権の経済政策であるアベノミクスを継承するとしていますが、首相が交代したことで、約8年続いたアベノミクスもひとつの区切りを迎えることになります。アベノミクスの成果をめぐっては、世間の評価が真っ二つという状況ですが、なぜ意見が大きく分かれてしまうのでしょうか。

 

アベノミクスに対する評価が両極端になってしまうのは、安倍氏に対する好き嫌いの問題もあるかと思いますが、最大の原因は経済に対する評価基準が定まっていないことです。

アベノミクスを支持する人は、安倍政権の約8年間で日本は経済成長を実現したので成果があったと主張しています。確かにアベノミクスの期間中、日本のGDP(国内総生産)は、物価の影響を考慮した実質で平均約1%の成長を実現しました(コロナ危機による大幅なマイナスは除外)。以前よりも経済が拡大したのは事実なので、これを基準にすれば、成果があったということになるでしょう。

しかし経済というものは、評価基準を変えるとまるで違った見え方になります。

経済を評価する上で大事なのは、前年よりも豊かになったのかということに加えて、諸外国と比較して豊かになったのかという点です。しばしば、海外と比較するのは意味がないという主張を耳にしますが、経済について言えば、その考え方は当てはまりません。
なぜなら私たちが日常的に消費する製品のほとんどは輸入で成り立っており、輸入品の価格というのは、日本ではなく諸外国の経済水準によって一方的に決まってしまうからです。

日本の経済が伸びず、海外では成長が続いた場合、食品など日本人が消費する製品の価格は上がる一方となり、生活が苦しくなります。このため経済について評価する際には、諸外国よりも成長率が高かったのかについても考慮する必要があるのです。
 
先ほど、アベノミクスの期間中、日本の平均成長率は1%程度だったと説明しましたが、この間、米国やドイツなど諸外国は1.5%から2%の成長を実現しており、諸外国の方が高い成長率となっていました。確かに日本国内ではプラス成長でしたが、諸外国との比較ではむしろマイナスだったというのが現実です。

 
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