ダー子、ボクちゃん、リチャードが欲望にまみれた人間たちから大金をだましとる大ヒットシリーズ『コンフィデンスマンJP』ファンにオススメしたいNetflix作品はスペイン発の犯罪アクションドラマ『ペーパー・ハウス』です。強盗団が主役のこのドラマは奇想天外な計画で大金を手に入れていくというもの。緻密に練られた脚本、憎めないキャラクターたちの描き方が何と言っても魅力的。そんな共通項があるのです。


赤いジャンプスーツにダリのマスクを被った3000億円争奪強盗団

Netflixオリジナルシリーズ『ペーパー・ハウス』独占配信中

数あるNetflixの外国語オリジナルシリーズの中で神ドラマと言われる『ペーパー・ハウス』の人気の理由のひとつが、怒涛のストーリー展開。最低でも1シーズンをイッキ見せざるを得ないほど、アドレナリン全開でぐいぐい引き込まれていきます。

 

物語は「教授」と名乗る謎の知能犯が、スペインのお尋ね者8人を集めて、24億円ユーロ(日本円でおよそ3000億)を稼ぐ強盗計画話を持ち掛けるところから始まります。実行期間は準備を含めて5か月、狙うのはタイトルの「ペーパー・ハウス」を意味するスペイン王立造幣局。かつてない大規模の強盗を、誰の血も流さず、誰のものでもないお金を完全犯罪で達成させようというのです。しかも、この計画は彼らにとって「犯罪」ではなく、「革命」とする意識の高さが爽快感すらもたらします。

ありとあらゆる犯罪ドラマが溢れるなかで、一度見たら忘れないキャッチーなビジュアルも印象的。赤のジャンプスーツに、画家サルバドール・ダリのマスクを被って強盗を実行します。コードネームは「トーキョー」「ベルリン」「ナイロビ」と都市名から名付けるセンスの良いシンプルさがまた覚えやすくて有難い。

ウルスラ・コルベロ演じる「トーキョー」。Netflixオリジナルシリーズ『ペーパー・ハウス』独占配信中

そして、緻密な脚本が売りという言葉に嘘はなく、人質交渉に汗をかくスペイン国家警察との駆け引きシーンは見もの。その心理合戦で時に身体も張る教授の頭脳プレーがこの作品のキモでもあります。
 

脂の乗った40代男の代表俳優アルバロ・モルテも恋に乱れる?


この教授役を演じたのはスペイン出身の遅咲き俳優アルバロ・モルテ。『ペーパー・ハウス』をきっかけに大注目され、まさに脂の乗った40代男代表です。ラテン系らしくセクシーな場面もお手物です。そのお相手は人質交渉人のラケル(イツィアル・イトゥーニョ)。ハラハラドキドキ感高まる関係性です。

アルバロ・モルテ演じる教授。Netflixオリジナルシリーズ『ペーパー・ハウス』独占配信中

恋に乱れるシーンが満載であるのもラテンドラマの醍醐味です。犯罪ドラマに余計な要素が詰め込まれているというわけでもない見せ方がこれまた脚本の妙。キャラクターの描き方にも定評があるのは恋愛感情から引き出される素の顔を巧みに見せているからでしょう。恋模様を彩るのは教授とラケルだけでなく、強盗団の中からトラブルメーカーの「トーキョー」と最年少の「リオ」、そしてまだまだ広がります。お約束の展開で人質メンバーとも絡み合っていくのですが、どれもこれも道ならぬ恋の予感たっぷり。

「恋愛は人間関係を乱し、コントロール不能になるから完璧な計画に綻びが生じる」。

これは実行前に言い渡していた教授の言葉なのですが、止まらぬ感情があふれ出ていくその様が予定調和を崩すストーリーとなり、キャラクターの深みを増していくのです。世界ヒットの超人気作であることは見たらきっと納得すること間違いなしです。シーズン5が製作されることが今年発表され、そのシーズン5が最終章になります。ショーランナーのアレックス・ピア曰く、これまでになく過激で熾烈な戦いが描かれるそうで、期待が高まります。配信日はまだ明かされていませんが、今から備えておくのが良さそうです。

【画像】中毒性あり!『ペーパー・ハウス』の独特な世界観>>


前回記事「『半沢直樹』と『梨泰院クラス』の意外な共通点とは?【好み別ドラマナビ】」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

ライター 渥美 志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、コスモポリタン日本版、withオンラインなど、ネット媒体の連載多数。食べること読むこと観ること、歴史と社会学、いろんなところで頑張る女性たちとイケメンの筋肉が好き。寄稿中の連載は、
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「COSMOPOLITAN」日本版『悪姫が世界を手に入れる』
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ライター 山本奈緒子
1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。

 
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