自分をきちんと納得させるためにも
様々な判断を自分で決めたい


直実は作品の中で感情の起伏が少ない女性に描かれているため、彼女が感情を爆発させるのは、ハルを失ったときだけです。実際の多部さんはどういうタイプなのでしょう。

多部:仕事場では淡々としていると思われがちなのですが、実はかなり喜怒哀楽がはっきりした性格なんです。感情が出やすいというか、泣いたりはしないんですが。

多部さんは映画のみならず、連続ドラマ、または舞台にも多数出演されています。それぞれにどんな魅力を感じていて、演じ方に違いがあるのかを伺いました。

多部:やっぱり舞台は面白いですよね。毎日同じキャストの方と毎日同じ芝居をしているのに“毎日違う変化がある”というのを楽しめるのは舞台しかないんです。ドラマは次々と撮影していくので、どこか流れ作業的なところがありますが、より多くの人に観ていただけるという長所があります。舞台、連続ドラマ、それぞれに良さがあるんだなって、最近は思うようになってきました。演じるうえでの違いについてはあまり意識しないようにしています。例えば舞台上だと声量を変えるという技術的な違いはありますが、“演じる”という意味ではどちらも同じですから。

 

多部さんは活躍の場が多岐にわたることから、挑戦する役柄も多種多様。脚本を貰ってそれを読み、役作りに取り掛かる際、役に対する理解を深めるために行う特別なプロセスなどはあるのでしょうか。

多部:取材でよく「役柄との共通点はありますか?」と聞かれるのですが、実はそれはあまり考えたことがないんです(笑)。台本を読むときは「この人はこういう女性なんだ」と客観的に見ることが多く、仮に頂いた役の人柄や考え方が理解できなかったとしても、“演じられない”わけではないので、自分と重ね合わせることはあまりありません。

 

そのスタンスは「デビューした当時から、変わらない」のだそう。質問にテキパキと答えてくださる姿には意志の強さが感じられます。中学生の頃から女優としてお仕事を重ね、経験を積んできたという歴史が、彼女をそうさせているのかもしれません。

多部:自分で決めたことはしっかりと責任を取らないといけないので、できる限りいろいろなことを“自分で決めたい”と思います。仕事の選び方だけでなく、今日はこれを食べるとか、今日はこの人と会ってこんな話をしようとか。誰かに頼れるところは頼る場面もありますが、最終的に自分自身が納得できる形を作るには“自分で決める”ことが大切ではないでしょうか。

多部さんは来年1月に32歳を迎えます。30歳を過ぎてからの心境の変化について伺いました。

多部:環境は大きく変わりましたが、心境が何か大きく変わったという印象はありません。ただ20代後半ぐらいから「会いたい人とだけ会えたらいい」とか「苦手な人がいてもそっとしておこう」とか(笑)、そう思うようになりました。もともとはっきりした性格ではありますが、それがより一層強くなったと思います。一年って本当にあっという間じゃないですか。なので、一瞬たりとも無駄にしたくない――。そういう思いが年々強くなっていく気がしています。

『空に住む』の中では、望んだわけではなくタワーマンションの一室に住むことになった直実。多部さんご自身は『空に住む』ような感覚のタワーマンションと、田舎の一軒家なら、どちらを選ぶ?

多部:比べるのは難しいですが、タワーマンションか田舎の一軒家かと聞かれたら、田舎の一軒家を選びます! 理由ですか? 私自身は高いところに住むのは少し苦手かも。なんだかタワーマンションって少し怖い気がしちゃって(笑)。

最後に読者の皆さんにメッセージを頂きました。

 

多部:『空に住む』はこういう映画です!と一言で説明するのはとても難しいのですが、見終わったあとにそれぞれの気持ちが不思議と理解できると思うんです。私たちみんな、どこかに闇や苦しみを抱えているところがあると思うので、それがスッとするといいなと思います。

 

多部未華子 Mikako Tabe
1989年1月25日、東京都生まれ。02年に女優デビュー。05年公開の映画『HINOKIO』『青空のゆくえ』でブルーリボン賞新人賞を受賞して注目を集める。09年にはNHK連続テレビ小説『つばさ』のヒロインも務めた。10年には『農業少女』で読売演劇大賞女優賞・杉村春子賞、エランドール賞新人賞などを受賞。映画、ドラマをはじめ、舞台、CMと多方面で活躍の場を広げている。近年の主な出演作に、映画『あやしい彼女』(16)、『日日是好日』(18)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、ドラマ『これは経費で落ちません!』(19/NHK)、『私の家政夫ナギサさん』(20/TBS)、ミュージカル「TOPHAT」(18)、舞台『ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~ 』(19)などがある。

<映画紹介>
『空に住む』
10月23日全国ロードショー

 

監督は、『EUREKA ユリイカ』でカンヌ国際映画祭批評家連盟賞受賞ほか国際的に高い評価を得る青山真治。7年ぶりの新作となる。
迷い傷つきながら確かな選択をして変わっていく直実を演じるのは映画、テレビ、舞台と幅広いジャンルで説得力に富んだ演技を見せる多部未華子。また今や日本映画界で高い評価を得る岸井ゆきの、美村里江、岩田剛典(EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、大森南朋、鶴見辰吾ら実力派が勢揃いした。主題歌は三代目 J SOUL BROTHERSの『空に住む ~Living in your Sky~』。作詞家・小竹正人の原作小説の世界観から生まれ、ライブでも愛されてきた神曲が深い感動を呼び起こす。

©2020 HIGH BROW CINEMA

<STORY>
郊外の小さな出版社に勤める直実は、両親の急死を受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいで大都会を見下ろすタワーマンションの高層階に住むことになった。長年の相棒・黒猫ハルとの暮らし、ワケアリ妊婦の後輩をはじめ気心のしれた仲間に囲まれた職場、それでも喪失感を抱え、浮遊するように生きる直実の前に現れたのは、同じマンションに住むスター俳優・時戸森則だった。彼との夢のような逢瀬に溺れながら、先は見えないことはわかっている。そんな日常にもやがて変化が訪れる。直実が選ぶ自分の人生とは――。

出演:多部未華子 / 岸井ゆきの 美村里江 / 岩田剛典 鶴見辰吾 / 岩下尚史 髙橋 洋 / 大森南朋 永瀬正敏 柄本 明
監督・脚本:青山真治 脚本:池田千尋 原作:小竹正人『空に住む』(講談社)
主題歌:三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「空に住む〜Living in your sky〜」(rhythm zone)
プロデューサー:井上鉄大 齋藤寛朗
製作:HIGH BROW CINEMA 制作プロダクション:カズモ 宣伝:miracleVOiCE FINOR 配給:アスミック・エース
©️2020 HIGH BROW CINEMA
公式サイト:soranisumu.jp

ヘアメイク: 渡辺真由美(GON.)
スタイリスト: 岡村春輝
撮影/塚田亮平
取材・文/前田美保
構成/川端里恵(編集部)

 
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