あそびは大事、とは言っても、「しつけ」も大切なのでは? という声が聞こえてきそうです。子どものイヤイヤ期にしっかりとしつけておかないと、「わがまま」な子になってしまうのではないか、といった相談をよく受けます。

最近では、「マシュマロテスト」の結果などもよく知られるようになり、「早いうちから、がまんができる子にしつけなければいけないのでは?」との相談も持ちかけられます。マシュマロテストとは、「1個のマシュマロを食べずに一定時間がまんできたら、もう1個マシュマロをもらえる」という条件を与えられた4歳児がどうするか、というスタンフォード大学での実験。この実験でがまんができて2個目をもらえた子は、その後、成長してからもがまんする力を持ち続けており、大学進学適性試験のスコアも高いということが追跡調査で明らかになったのです。

 

それでは、がまんする力はどのようにして育まれるのでしょうか。厳しいしつけはむしろ効果的ではないとも言われます。それは、厳しく𠮟られるだけでは、怒られるのが怖いからしたいことをしないだけで、本質的に自分の気持ちをコントロールできているわけではないからです。ここで言うがまんする力とは、自分の感情をコントロールする力とも言い換えられます。大切なのは、自分の気持ちを自分でコントロールできるようになることなのです。

 

たとえば、満足するまで十分にあそんだ子は、気持ちを切り替えて、次のことをしようとします。だから、「まだ、あそびたい」とごねる子を前にした時、もし可能であれば、「じゃあ、もう少し待ってるね。でも、お買い物があるから、もう楽しんだからいいよって思ったら、おしえてね」などと、子どもが自分で決める機会を与えると、突然「いいよ」と気持ちを切り替えることもあるものです。つまり、もっとも大切で有効な「しつけ」とは、厳しく𠮟ったりすることではなく、毎日の生活の中で、子どもが自分で自分の気持ちを切り替えることができるように、お手伝いしてあげることなのです。

最近のさまざまな研究で、非認知能力の中でも、自己制御(自己調整力)がとても大切だということがわかっています。とは言え、イヤイヤ期や乳幼児期の子どもは、なかなか気持ちがおさまらないものです。嵐が過ぎる時をゆっくり待ちましょう。子どもにとってはこの時期に、イヤイヤの思いを丁寧に受け止めてもらえることが大切で、その時にうまく気持ちがおさめられなくてもいいのです。長期的に見れば、そこで自分の気持ちをわかってもらえる大人がいることが大切です。焦らず、ゆっくり、「まあいいか」くらいの気持ちで見守ってあげましょう。

 

『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』
著者:大豆生田 啓友・大豆生田 千夏 講談社 1400円(税別)

乳幼児期に育むことが大切な「非認知能力」。非認知能力の基礎知識から、子どもの非認知能力を培いながら、パパもママも幸せになれる「あそびのレシピ」を多数収録した一冊です。 


構成/金澤英恵