「リビング+キッチン」の広さは6畳


かつて日本には「隠居」という理想的な老後の過ごし方がありました。年老いて体力の衰えを感じたら、長男に家督を譲って第一線から引退。仕事だけでなく身の回りの世話なども若い世代にまかせて、後は悠々自適に趣味のことなどしながら過ごします。そんな「ご隠居さん」と呼ばれる人たちが、男女を問わず近所に何人もいらっしゃいました。

でも、今はそうはいきません。子どもたちは大きくなると家を出て、残るはシニアばかり。家事も仕事も、身体が動く限りは自分でするしかありません。

私もそうです。3人の子どもたちは大学進学を機に次々と家を出て、その後社会人になり、今ではそれぞれの暮らしを営んでいます。にぎやかだった5人家族が、気がつけば、夫婦ふたりになっていました。

子どもたちが独立したことを機に、娘さんの部屋だったところをリビングキッチンに改装。別の部屋にはトランポリンが置いてあり、村上さんは健康のためになんと毎朝100回跳ぶそうです!


人数が減ったからといって、食パンをナイフで切るように家をカットすることはできません。夫とふたりになったとき、娘の部屋だった6畳間をリビングキッチンに改装しました。夫が亡くなった今も住んでいる、福岡の自宅の床面積は全体では165㎡くらいですが、私がプライベートの時間を過ごすのは6畳スペースのリビングキッチン。仏壇もこの部屋に移し、朝な夕なにごはんやお茶、菓子をお供えして「チン!」と鳴らして手を合わせています。

あるとき、料理教室の生徒さんが私のプライベートスペースを見て、おっしゃいました。
「ああ、人生ってこれでいいんだ!」

 


キッチンを「とにかくシンプル」に!


「人生は探しものの時間がないと3倍有効に使える」と言った人がいますが、台所仕事もまさしくそうです。なんでもしまいこんでしまって、「あれどこだったかしら」とあちこちの扉を開けたり引き出しの中をのぞいたり。高いところにしまったものは、椅子を持ってきて、のぼって取り出す。棚の奥のほうに置いてあるものを取り出すために手前のものを出して、またしまう。

そんなことをしていたら疲れるばかりで、台所に立つこと自体がおっくうになってしまいます。私のような料理好きでも、面倒になって料理をやらなくなるかもしれません。

シニアになったら、これまで以上に自分を大切にしなくてはいけません。自分を困らせないように、シンプルキッチンに変えてはどうですか。

6畳スペースのリビングキッチンに立つ村上さん。シンプルで使いやすいのが何よりの自慢!

シンプルキッチンは「見える」キッチンです。自分にとって絶対に必要なものだけがある、潔いキッチン。作り上げるためのお金はほとんどかかりません。ただ、「何が必要か」を選ぶことは、とても根気のいる作業です。できれば、体力も気力も充実しているときに始めるといいですね。私のシンプルキッチンは、夫とふたり暮らしになった2007年、65歳のときに作りました。いろんなアイデアが詰まった理想のキッチンです。