女性誌を中心にフードライターとして活躍しつつ、実はフィギュアスケートの記事も担当している齋藤優子さん。羽生結弦選手や小塚崇彦さんにインタビューしたことも! いよいよ今年も10月24日からフィギュアシーズンの到来。今年の見所をたっぷりご紹介してもらいました。

解説者としてのキャリアにも期待したい町田樹さん。2年前の『ジャパンオープン』にはゲストとして出場。この日を最後にプロフィギュアスケーターからも引退したが、その時の寂しさは何処へやら……、ここのところ大忙しの町田さん。3月に早稲田大学大学院の博士取得。10月に國學院大學の助教に着任。慶應義塾大学、法政大学でも非常勤講師を務める。  写真:築田純/アフロスポーツ

 


愛ゆえに長くなりがちだった町田樹さんの解説が
大幅にバージョンアップ!


全日本選手権への出場をかけたブロック大会が始まり、ISUグランプリシリーズも10月24日からスタート……と、いよいよ動き出した北京五輪のプレシーズン。それに先立ち、10月5日には、シーズンの幕開けを飾る『フィギュアスケート ジャパンオープン』が開催されました。そのテレビ中継で解説を務めたのが、ここのところ、ファンがアワアワしてしまうほど、ドトーの活躍ぶりをみせる元フィギュアスケーターの町田樹さん。この町田樹史上初の競技解説が、“これよ、これ! 地上波でこういう解説を待っていた!!”“これぞ、競技の裾野を広げる名解説”という内容だったので、遅ればせながら、今後の観戦のおともに振り返ってみたいと思います。

アイスショーでのスペシャル解説が評判だったとはいえ、今回は細かなルールを基に得点を競う競技解説。時に使用曲の解説や衣裳にまで切り込み、話が長くなりがちな町田さんゆえ、どうなのかなぁ? なんて、ちょっぴり気をもみましたが、どんでもなかったですね。大学での講師キャリアを物語る話の運び。アーティスティックスポーツ研究者の面目躍如たる内容。高難度ジャンプや得点に偏ることなく、ステップやコレオシークエンスなどの見方や難しさに言及。データを盛り込む一方で、選手の個性やプログラム、振り付けの見どころまで、出場全選手等しく、心を込めて解説してくれました。 “十全”“ガーリー”“たおやか”など、独特の言い回しも時折顔を出し、ファンサービス(!?)も怠りなし!

例年は日本、ヨーロッパ、北アメリカの3地域対抗だが、今年は日本のスケーター10人による対抗戦だった『ジャパンオープン』。山本草太、吉田陽菜、樋口新葉、横井ゆは菜、佐藤洸彬、日野龍樹、浦松千聖、川畑和愛、山下真瑚、本田ルーカス剛史各選手&スケーターが出場。写真:森田直樹/アフロスポーツ


町田さんの解説なら
フィギュアスケートが今までよりもっと楽しく!


今回、研究者・町田樹(と、テレビ東京)が、新たに試みたのが、データ解説。
複雑でモヤモヤしがちな採点方法を少しでもわかりやすくと、最近はいろいろな試みがなされているのですが、町田解説では、ジャンプの成功率、スピンやステップのレベルなど、出場選手の過去2シーズンのスコアをチェックし、そのデータを盛り込んでいます。当然のことながら、“昨年はレベル2に抑えられていたステップシークエンス”など、試技前にマイナスのデータが示されることも多々ありますが、なぜレベル2に留まったのか、どこをどうすればよくなるのか、という改善点まで指摘してくれるから、素直に頷けます。

そしてこちらの要素を観る眼も養われます。ジャンプもしかり。トリプルアクセルで手をついてしまっても、成功率が50%以下なら、“いまの段階なら、これで十分。あとは着氷~“などとポジティブに語ってくれるので、むやみに落胆せずにすむという。加えて、データを示してもらうことで、“ループより(難度が高い)ルッツが得意な選手なのね”“スピンの名手なのか”と、まだ馴染みが薄い選手の特徴も把握できるので、賛否はあるだろうけれど、個人的には大賛成。国際大会でも、ぜひ聞いてみたいです。

昨年の全日本選手権で3位になり、今季シニアデビューした川畑和愛選手。成功率が約50%という前半のトリプルループジャンプを、両手を挙げたタノをつけて、華麗に決めた。町田さんいわく、スケーティングが速く、その速度を転化して回る、シャープで端正なジャンプが持ち味とか。加えて、「たおやかなアームスの動き」にも注目! グランプリシリーズNHK杯に出場予定。写真:長田洋平/アフロスポーツ

そして、ただ名前を連呼されても、初心者には、“?”が浮かんだまま観ているしかないジャンプやスピン以外の要素。これも、“コレオシークエンス(ブチッ!)”で終わるのではなく、「音楽を十全に表現するステップのパート」などと、端的に説明を入れてくれるから、ストンと落ちます。

 
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