――おふたりは、本当に大切なものができたら、何があっても守り抜きたいですか。それとも晃のように手放すことを選択すると思いますか。

楽駆:僕は絶対大事にします。もちろん場合によっては自分から遠ざけることはあると思うんですけど。でもちゃんと大事にしたいですね。

白洲:本当にその状況によりけりだよね。何をかけても手放したくないという気持ちと、逆に守りたいからこそ逃げたくなる気持ち。その両方が自分の中にあるだろうなと思います。


あの再会は、何億分の1の確率で起きた奇跡みたいな出来事


――では、楽駆さんの心に残ったシーンはどこですか。

楽駆:アラスカでの再会のシーンですね。感情的にもそう何回もできるシーンではなかったので、どう自分を持っていくかがすごく大事で。それを、迅くんが手助けしてくれたというか。あの場面に迅くんのそういう思いやりが全部出ていると思います。

白洲:晃と夕希の長い人生を描いた作品ではあるんですけど、撮影期間そのものはやっぱり限られているから、その短いストロークでちゃんとこれまで晃と夕希が過ごした時間を積み重ねていった上で、あの再会のシーンに持っていかなくちゃいけなかった。簡単なことではない分、お互いがよりひとつになれた気がします。

楽駆:僕、最初に再会のシーンを原作で読んだとき、夕希は何度もアラスカに行っていて、これが最後と決めて行ったあのときにもう一度晃と再会したのかなと思っていたんです。でも、後で聞いたらそうではないんだと。夕希自身もあのとき初めてアラスカに行ったんだと教えてもらって。日本に住んでるふたりが偶然同じ日にアラスカへ行って、そこで再会するなんて、確率で言ったらきっと何億分の1とかで、本当に奇跡みたいな出来事ですよね。

 

 

 

白洲:しかも数年ぶりに再会して、その一発目に晃が言う台詞が「愛してる」だから。

楽駆:客観的に見るとちょっとどうなの、というね(笑)。

白洲:自分から振ったくせにいきなり「愛してる」なんてってツッコミを入れたくなるんだけど。でも晃にとっては、やっと家族の前で本当の気持ちを吐き出せて。もう一度、夕希と会いたくて、探して、でも見つけられなくて。アラスカに行ったのも、一縷の望みに賭けたというか。ほぼ諦めている精神状態だったからこそ、思わず出た言葉があの「愛してる」なんだろうなって。そして、あの「愛してる」こそが、晃がずっと伝えたかった本心なんだろうなと思う。

楽駆:たぶん再会の場所がアラスカじゃなかったら、また違うものになってたかもしれないですよね。ふたりしてアラスカまで行って、そこでやっと会えたから、あそこまで素直に気持ちをぶつけられたのかもしれない。

 


何でも話せちゃう空気感を楽駆は持っている


――お芝居をやっていく中で、相手が白洲さんだから、楽駆さんだから出てきた感情というのはありましたか。

楽駆:それで言いますと……、全部がそうでした。出演が決まって、初めてお会いしてからずっと、僕の中では相手が迅くんだからというのはずっとありましたね。本当に何度も支えてもらいました。(白洲を見て)あ、いいですよ、僕のことは言わなくても(笑)。

白洲:何でだよ(笑)。

楽駆:ほら、褒め合いみたいになっちゃうから(照)。

――せっかくですから、褒め合いましょう(笑)。

楽駆:えー。じゃあ、ずっと僕が喋っとこ(笑)。

――ダメです(笑)。では白洲さん、ぜひ楽駆さんのことを教えてください。

白洲:楽駆はですね、どうしようもないやつで、毎朝遅刻してきました(笑)。

楽駆:一回もしてないわ(笑)。

白洲:まあそれは冗談として。顔合わせのときに初めて会って、そのあとふたりですぐにカフェに行ったんですね。そこで何時間も喋って。そのときからこれはもう大丈夫と思えるようなものが楽駆にはありました。今まで、こんなにお互いの役を一緒につくっていくような現場ってなかなかなかったので。楽駆は、いろんな意味で貴重な体験ができた相手です。