森下 また、女性ホルモンが急激に減少する更年期は唾液の分泌量が低下しますので、より舌苔が溜りやすくなります。日々のブラッシングに舌ブラシや舌ベラを使った「舌みがき」を加えてケアしていただくといいでしょう。
舌苔は目視ができるもの。口臭の指標として毎日、見ていただけたら良いのなかと思います。

 

ダイエットも口臭の原因に


舌苔の除去や口臭の緩和には、食事が大切です。舌苔は、固形物と舌が接触することで剥がれていくのですが、食事をとることで唾液の分泌量もアップし、相乗効果で口臭が減っていくんです。
そのため、野菜ジュースといった飲み物だけで朝食を済ませた場合は口臭が発生しやすくなります。
また、ダイエットで食事を抜くとこれらの効果がすべて得られないため、口臭が目立ちやすくなります。口臭という意味でも、栄養の観点からも、無理なダイエットは控えていただきたいですね。

――口臭の原因のひとつである歯周病も、自分では気づけないものでしょうか?


森下 歯ブラシをしていて高い頻度で出血が見られる方は、歯周病の可能性が考えられます。ぜひ歯医者さんで一度診ていただくことをおすすめします。
そもそも歯周病は、日本人の8割が罹患していると言われる国民病です。30歳以降から急激に患者が増えることでも知られていることから、大人になってからは虫歯対策より、歯周病ケアに重点を置きたいところです。
でも、日に2度も3度も歯を磨く習慣のあるきれい好きな日本人になぜ歯周病が多いのか、ちょっと不思議じゃないですか? それは、磨いているのに磨けていないから、なんです。
特に歯周病の場合、歯と歯茎の間の歯周ポケットが深くなればなるほど、歯ブラシが届きにくくなっていきます。自分の歯の状態に合った道具や正しい歯みがきの仕方を歯科医や歯科衛生士に指導してもらい、ホームクリーニングとプロフェッショナルケアを並行することで、症状を進行させないことが大切です。

――コロナ危機で歯医者に行くのが不安、という声もあります。


森下 自粛期間中、学校が休校になったり自宅作業が増えたことで糖質を含む食べ物の「ダラダラ食い」が増えた上に、歯医者通いを中断される人も多く、虫歯が増えていることが問題になっています。
現在のところ、国内では歯科医院を通じてコロナウイルスに感染した例はありません。感染対策は各病院で十分に行っていますので、そこは過度に心配されることなく、これまでどおり定期的にクリーニングなどをしていただけたら良いのかなと思います。

次回は、「大人の矯正」について森下先生にお聞きします。
 

 

『東京医科歯科大学を首席卒業した名医が教える 世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか 科学的に正しい歯のケア方法』
著者:森下真紀 ダイヤモンド社 1760円

「歯」と「口臭予防」に投資を惜しまず、ケアをかかさない欧米のエリートたち。東京医科歯科大学を首席で卒業した歯学博士の森下真紀さんが、英国に留学した際に改めて感じた日本人の歯に対する意識の低さから、歯に関する予防・治療の正しい知識を啓蒙してくれる一冊です。


構成/小泉なつみ

第2回「『歯』で人生が変わった女性歯学博士に聞く。大人の矯正、いくつまでOK? 」は11月1日公開予定です。

 
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