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田村淳さん、オワコンと言われた私にこれからの生き方を教えてください!【青木さやか】

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青木:私は、その場でヘラヘラ笑って、辛さや悔しさをごまかしちゃって。そんな状態でロンハーの現場に入って、淳さんの前だから、甘えちゃったんでしょうね。喋らない、みたいにしてしまって……。収録後、演出の加地さんから「いい加減にしろよ、傷ついたかもしれないけど、みんなお前のことを考えてやってるんだ。淳に謝ってこい!」と叱られました。「格付けしあう女たち」での淳さんには、女性たちに「今日はこういう流れで、こういうふうにやってほしい」という気持ちが、微塵もなかったんですよね。だからでしょうか。淳さんに対して一回も緊張しませんでした。淳さんの存在を忘れることさえありました。だから自分をさらけ出して怒れたし、泣くこともできたのかも知れません。

 

田村:俺自身が、高圧的に番組を進行する人がどうしても苦手で、頑張りたいのに頑張れなくなっちゃう現場が何回かあったから。だから俺の時は、一応手綱は引くけれども、時間を気にせず、極力自由にやってというスタンスなんだよね。

青木:キャストのいいところが出るまで、すごく待ってもくださった。そうやって引き出されたキャラクターによって、本当は出したくない本音まで出てしまっておかしなことになっていくんですけども(笑)。それと、淳さんはドッキリ企画が終わると、毎回必ず「ありがとうございました」って頭を下げられるんですけど、それってすごいなって。どういった気持ちからなんですか?

田村:青木のドッキリって、いいのが撮れたなっていう実感があるんだよ。でも、ドッキリを仕掛けられれば、俺に対してムカつくだろうし、OA後に周りから「面白かったよ」とか「淳はひどい」とか反応があるまで、その気持ちを一人で抱えなきゃいけない。でも、見てる側がこんなにも楽しい企画で、本人に嫌な気持ちにだけはなってほしくないんだよね。ドッキリをかけまくってる狩野(英孝)さんやパンサーの尾形(貴弘)さんに対しても、同じ気持ちです(笑)。
 

 

軸足の置き方次第で、人からの扱いも人生も大きく変わる。
 

青木:6年くらい前に「私が芸能界を引退する」という内容のネットニュースが出た時、食事に誘ってくださったじゃないですか。あれが、後にも先にも唯一、二人っきりでの食事ですけど、どうして、連絡をくださったんですか?

田村:いろんな人の気持ちを背負って立ち続けていた青木さやかが、本当に芸能界からいなくなっちゃうのか、確かめたかったんだよね。こんな稀有な人が、芸能界を去るのはもったいない。よほど辞めなきゃいけない理由があるなら別だけど、ないなら引き留めないとって。

青木:実はあのニュースは、ちょっと私の思いとは違う方向で伝わってしまっていて。ある番組で「子どもが、私のネットニュースを見て傷つくとしたら、芸能界を辞めますか?」と聞かれたので、「それだったら辞めるかな」と答えたら「芸能界を辞めたい」に変わってたんです。そんなふうに書かれてしまうなら、それこそ辞めてしまいたいと思いましたけど、淳さんが引き留めてくださったおかげもあり、こうして芸能界にいられています。「淳さんが」という時点で、他人軸なんですけど……。

田村:でも青木さんは、芸能界を辞めたとしても、影響力を発揮できる人だと思う。今やってる保護動物の活動とか、自分がやりたいことに力を注ぎ込んでるでしょ。それって自分軸で、すごくいい。穿った目で見る人もいるけど、そういう、小さなムラの中で変化せず生きてる人たちの言葉は、気にしなくていいと思う。

青木:誰かのために、他人から求められることをやってきた以前の私は、けっして本当の私ではなかったなと思います。ただ、見てる人にとっては、どれだけ「バラエティはショータイムですよ。本当の私じゃないですよ」と説明したところで、当たり前ですけど、伝わらない。青木さやかが言ったことのすべてを背負わなきゃならず、その負担があまりにも大きかったんですよね。自分の言葉で話す自信も失って、だからバラエティから遠のいてしまった側面もあったかもしれません。でも今は自分軸で、いろんな番組に出ていきたいと思ってます。

田村:もちろん、合わせなきゃいけない部分もあるけどね。あちらにも〝番組軸″があるわけだから。

青木:はい、そうですね。不思議なことに“自分軸”が出来てくると、その“軸”をくださいと求めてもらえるようになってきました。番組のひと駒としてではなく、あなた自身としていてくださいって。まだまだなんですけど、軸足の置き方次第でいろんなことが大きく変わると実感しています。

青木さん:シャツ¥14000/TEEE、パンツ¥23000/H.A.K(HAKKA GROUP)


衣装のお問い合わせ(青木さん)/
HAKKA GROUP tel. 03-3498-0722

田村淳 Atsushi Tamura
1973年、山口県出身。1993年ロンドンブーツ1号2号結成。バラエティ番組や経済・情報番組などでレギュラー番組多数。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科に在学中。そして今春にはYouTube「ロンブーチャンネル」を開設するなど、テレビタレントの枠を超え更なる可能性を追求し続ける。

青木さやか Sayaka Aoki
1973年、愛知県出身。フリーアナウンサーとして活動、その後タレントの道へ。以降、バラエティ番組やドラマ、エッセイの執筆など幅広く活躍中。近年はYoutubeチャンネル「犬と猫とわたし達の人生の楽しみ方」などを中心に、動物の保護活動にも力を注いでいる。12月にはニール・サイモン作、三谷幸喜演出の舞台『23階の笑い』に出演。

撮影/塚田亮平
スタイリング/富田麻美(田村さん)、池戸美希子(青木さん)
ヘア&メイク/佐々木夢(田村さん)、林達朗(Paja Pati・青木さん)
取材・文/小泉咲子
構成/山崎 恵

 

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