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自分の「太陽と月とアセンダント」を知って風の時代を上手に生きる【占星術家・新里ひろきさん】

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日本では占い師がセラピストのポジションに

 

編集部:アメリカで占星術の勉強をされて、日本とアメリカの違いというのはありましたか。アメリカでも日本のように一般の人が恋愛運をみたりするのでしょうか。

新里さん:そういう側面も存在するとは思うんですが、日本の占いのサブカルチャーと比べると、アメリカはそれほどでもないと思います。
確かに「自分の運勢を教えてください」というのもありますけど、それ以前に「自分のことを知りたい」「どういうふうに生きれば、自分の才能や潜在能力をより生かせるんだろうか」といった、もう少しスピリチュアルな視点からのアプローチをする人が多いと思いますね。

どちらかというと、セラピーを受けるような感覚です。アメリカでは心理療法もメジャーで、ごく普通にみんながセラピーやカウンセリングを受ける社会ですからね。そこに社会的な批判もないし、受ける側に心理的な負担もありません。そういう環境ですから、自分の心や感情を客観的に見つめる一つの方法として、占星術を活用するというような基盤ができています。

でも、日本の場合は、そうした環境がまだ成熟していませんから、普通の人は素晴らしいカウンセラーやセラピストに出会う機会もほとんどなければ、そういう人に相談しながら自分の心と向き合う時間もあまりないでしょう。
そのため、占い師がその役割を担っているということは、あるかもしれませんね。何か悩みがあると、親身に話を聞いてくれる占い師のところへ行って相談する、という人もいると思います。近しい人より占い師のような一歩離れた存在のほうが、むしろ話しやすいという傾向も、日本人ならありそうですね。
 

 

家族間のコミュニケーションも占星術で歩み寄れる

 

編集部:今、新型コロナウィルスの影響、家で過ごす時間が増えています。そのため家族が仲良くなったという家庭もあれば、逆にストレスがたまっている家庭もあるようです。そうした周りの環境との関わり方について、占星術では何かヒントになることはあるのでしょうか。

新里さん:心理占星術では個人と環境との関係性というものが、その人が生まれたときの星の配置を示すホロスコープという図を見ると、そこに強く現れています。それを分析することで、その人の生まれたときの家族環境がどういったものだったのか、両親とのコミュニケーションはどうだったかを読み解くことができます。

たとえば、情緒的なコミュニケーションがあまりなかった家庭に生まれた人が、もし情緒的なコミュニケーションのある家庭に生まれていた相手と結婚する場合、二人の間には大きな価値観の相違が生じます。その二人が生活を共にすると、「なぜパートナーがそういう言動をするのかまったくわからない」といったすれ違いが、大なり小なり起きてくるでしょう。それが今回のコロナ禍で、一緒に家で過ごす時間がますます多くなってくると、当然お互いのことが理解できないという夫婦やカップルが増えてくるとは思います。

ただ、不思議なもので、お互いのホロスコープを見て、育った家庭環境がその人に与えていた影響を知ると、相手のことがよく理解できるようになるんですね。相手の価値観がなぜ自分と違うのか、その根本原因を知れば、お互いに歩み寄ることもできる。

子供との関係も同じです。子供の出生時のホロスコープを読み解くことで、その子が本来どういう欲求をもって生まれてきたかが推測できます。でもそれは親のもっている欲求とは、違うものかもしれません。たとえば、情緒的なコミュニケーションの少ない家庭で育った親のもとに、もし情緒的なコミュニケーションをすごく求めるタイプの子供が生まれたとしたら、やはりお互いにストレスや不満を抱えてしまい、親子関係にさまざまな溝が生じるかもしれません。

私も母親に対してコンサルテーションを行なっていると、たとえば「なぜ自分の子供がこんなにべったり自分についてくるのかわからない」「なぜ子供はすぐだだをこねるのか理解できない」というような話を聞くことがあります。
そういう場合は、そのお子さんのホロスコープを見ながら、「本当はこの子はこういうものを求めているんですよ」とお母さんたちにお伝えすると、お母さんたちは子供を客観的に見ることができるんですね。そうなるとお母さんたちの子供への接し方が変わってきます。親子の関係性がぐんと改善されるわけです。

ホロスコープで重要なのは「太陽」と「月」と「アセンダント」


編集部:最近ではネットで出生日時を入力すると、その人のホロスコープが作成できるサービスなども出てきています。私たちが自分や家族のホロスコープを見る場合、どういうところを重視すれば、本人の価値観や欲求というものがわかるのですか?

新里さん:初心者の方なら、「太陽と月とアセンダント」の3つが何座に入っているかを見るといいでしょう。

太陽が入っている星座というのは、いわゆるみなさんが雑誌の占いページなどで目にする星座です。そのほかに、感情面を司る月が入っている星座と、人間関係においてどういう自分でありたいかを示すアセンダントというものがどの星座にあるかがわかると、その人の欲求や新たな側面が見えてくると思います。
解釈の仕方は専門的になるのでここでは割愛しますが、興味があれば私のポッドキャストでもそのあたりの話をしていますので、良ければお聞きになってください。

また、自分のホロスコープを読み解くことで自分自身を知ることも、「風の時代」を生き抜くうえで大切だと思いますね。自分が生まれたときのホロスコープには、自分の強みや潜在的可能性、才能や能力といったものが強く表現されています。
でも、環境の影響などでそれに気づかないまま大人になってしまった人も意外と多い。そのため自分の個性を十分に生かしきれていなくて、「私なんて」と自分を否定して生きてしまっている人もいると思います。
心理占星術をそうした自分の潜在能力や強みというものを認識ためのツールとして活用するのは、とても有効的な使い方だと思います。
自分のことをより理解できれば、もっと楽に生きられるかもしれないし、他人と自分を比べて落ち込んだりすることもなくなると思います。
とくにミモレ世代の人たちで、自分にはまだ何かがあるんじゃないかと思う人は、開花していない潜在能力があるのかもしれませんよ。