難聴や耳鳴りを感じて耳鼻科を受診した場合、一体どんなことが行われるのでしょうか。難聴の経験がないと、わからないことだらけですよね。少しでも知識を持っていれば、急に難聴が起こっても安心して病院に行くことができるはずです。そこで今回は、実際の耳鼻科で行われている突発性難聴の診察・治療について、耳鼻咽喉科専門医の前田陽平先生にお聞きします。

 

1.耳鼻科ではどんな診察・治療をするの?


突発性難聴を疑うような急性の難聴の診察では、聴力検査、鼓膜の診察のほか、他の脳神経に異常がないかも確認します。突発性難聴以外の脳梗塞や聴神経腫瘍などを疑う時には、MRIなどの画像検査を行うこともありますね。

治療は、ステロイドを中心としたものが一般的ですね。

難聴は先に述べたように伝音難聴と感音難聴に分けられますが、急に起きた感音難聴で突発性難聴ではない場合、というのはむしろ特殊なケースといえるかもしれません。多くの方はあまり心配しすぎることはありませんから、急な難聴が起きたらまずは突発性難聴の可能性を疑って、早めに耳鼻科を受診していただくのが大事だと思います。


2.治療期間はどのくらい?


一般的に1週間から10日間程度の集中的な治療が行われます。その後も症状の様子を見ながら投薬を続けることもありますね。

突発性難聴というのはごくありふれた病気ですが、治療ガイドラインはさまざまあるものの、これといったものが定められているわけではないので、先生によって治療内容に多少の違いがあります。ステロイドを軸にした治療をある程度行うという点は共通しているものの、病院によって使用される薬や日数に少し違いがあるのはそういう理由もあるのですね。また、軽症の方であれば内服のステロイドで治療されることもあります。突発性難聴の重症度によっても治療内容・期間が変わりますので、知り合いの話と違う……、などとあまり考えすぎない方が良い場合もありますね。

3.市販薬で治る? 治らない?


市販薬はおすすめしませんね。基本的には耳鼻科へいらしていただくのが望ましいです。ただ、突発性難聴は自然に治癒することがある疾患としても知られているんですよ。原因が取り除かれるというよりは、自然経過で少しずつよくなることがあるんです。

原因が不明ですから、こういったことが起こるのも突発性難聴という病気の難しいところと言えるでしょうね。

4.突発性難聴に種類はあるの?


突発性難聴に関する研究などでは重症度別で分類されていたりもしますが、少なくとも本邦においては種類や分類で正式に広く知られているものはないと思います。

突発性難聴と一度診断されると、その後も病名が変わらない方がほとんどです。「原因不明のままなんて怖い!」と思うかもしれませんが、別の病気が見つかるケースは、めまいを伴う「メニエール病」や、聴力を伝える神経に腫瘍ができてしまう「聴神経腫瘍」である場合も。

こうした長期的に治療が必要な病気が見つかってしまう方が患者さんにとってはよっぽど大変ですから、耳鼻科医としては、患者さんが突発性難聴の診断のまま、他の検査をしても変わらないということは必ずしも悪いこととは言えないんですね。

前田陽平 Yohei Maeda

大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科。耳鼻咽喉科専門医・指導医・医学博士。アレルギー学会認定専門医・指導医。Twitterでも耳鼻科や医療関連の情報を発信している。
【Twitter】ひまみみ 耳鼻科 前田陽平(@ent_univ_)


取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

【全4回】
第一回「突発性難聴の原因と症状「突然耳が聞こえなくなる」原因を耳鼻科医が解説」>>
第二回「突発性難聴は「72時間」を過ぎたらダメ?! 耳鼻科の先生に聞いてみた」>>
第四回「突発性難聴はクセになる?繰り返さない&発症させないための生活習慣とは」