ある日突然起こる突発性難聴。治療によって回復が得られることも多い病気ですが、目に見えない耳の中の異常ということもあり、何度も繰り返してしまわないかちょっと心配ですよね。さらに、原因が特定できないこの病気を、日常生活で未然に防ぐことはできるのでしょうか。そこで「突発性難聴」最終回では、突発性難聴の後遺症や再発傾向、日々の防衛策について、耳鼻咽喉科専門医の前田陽平先生に詳しく教えていただきます。

 

1.後遺症や再発が心配……クセになったりする?


突発性難聴の後遺症としては、残念ながら難聴が残ってしまうケースは出てきます。高度な感音難聴はめまいを伴うことがありますが、めまいは治っても難聴だけ残ってしまうことがあるんですね。

基本的には1回きりの病気ですので、突発性難聴を何度も繰り返すということはあまり考えなくていいと思います。何度も繰り返してしまうというような場合は、突発性難聴ではない別の病気を考える必要がありますね。

例えば、メニエール病などがそうです。難聴を伴うめまい発作を繰り返すメニエール病は、初めての発作の症状が突発性難聴と区別がつきにくく、似たような経過をたどることがあるんです。突発性難聴もメニエール病も、内耳の不具合で起きる感音難聴ですから、症状も似てくるんですよね。メニエール病の場合は低音部に難聴が起きるという特徴があります。突発性難聴のような病状でも低音部中心の感音難聴の場合は繰り返す可能性を患者さんに特に説明することになりますね。


2.日常的に気をつけるべきことはある?

 

血管が詰まってしまう血栓が原因では? ということも言われていますから、動脈硬化につながるような食事習慣は避けた方がいいかなとは思いますね。食べ過ぎや、食塩・糖分などの摂り過ぎに気をつけていただくに越したことはありません。ただし、食事が主たる原因となる疾患ではありませんから、突発性難聴のため、というだけの観点であればそこまで神経質にならなくても良いと思います。

以前解説しためまいと同様に、睡眠不足とストレスが溜まった状態も良くないです。診察ではいろいろな検査によって原因を調べていきますが、難聴の背後にうつ病など別の疾患を疑う場合もあり、患者さんの睡眠状態を知ることも大切なんです。難聴だけでなく夜眠れないなどの不眠症状があるようなら、耳鼻科の先生にも相談してみてくださいね。

前田陽平 Yohei Maeda

大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科。耳鼻咽喉科専門医・指導医・医学博士。アレルギー学会認定専門医・指導医。Twitterでも耳鼻科や医療関連の情報を発信している。
【Twitter】ひまみみ 耳鼻科 前田陽平(@ent_univ_)


取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

【全4回】
第一回「突発性難聴の原因と症状「突然耳が聞こえなくなる」原因を耳鼻科医が解説」>>
第二回「突発性難聴は「72時間」を過ぎたらダメ?! 耳鼻科の先生に聞いてみた」>>
第三回「突発性難聴ってどうやって治すの?診察と治療法を医師が解説」>>