有名人や知人が「心不全で亡くなった」「脳卒中で倒れて入院中」といったエピソードを耳にすることはありませんか?
「まだ若いのに、信じられない」「元気そうだったよね……」とショックを受けつつも、どこか他人事。「自分だけは大丈夫!」と根拠のない自信を私は持っていました。あの日JR山の手線内で倒れるまでは――。
「もしも」は誰にでも起こりうると実感した医療ライターの私が、心肺停止で倒れてから退院するまでの日々をつづりました。参考になることがひとつでもあれば幸いです。


自宅で倒れていたら、確実に死んでいました


50代バツイチ、猫3匹との4人暮らし。普段はステイホームで仕事をしているフリーライターの私。今になって振り返れば、脆弱すぎる環境でした。

 

約1年前のあの日、たまたまアポがあり、朝方に胸が痛むので「少し遅れます」と先方に連絡。なんとか向かっていた電車内で、突然はやってきました。
心肺停止で、一瞬で失神。顔面を強打し、大量の鼻血を流し、口からはブクブクと泡を吹いていたそう。その姿を目撃した乗客の女性が、即座に携帯電話で救急車を手配。連絡を受けた車掌の指示で、次の駅に待ち構えていた駅員によるAED&心臓マッサージが行われ、5分後には駆けつけた救急隊によって病院に搬送されました。

 

その場に居合わせた「バイスタンダー」と呼ばれる人たちの、最強最速バトンパスで、約1時間後に集中治療室で人工心肺につながれ、命を取り留めることができたのです。
かつて夢中で見ていた海外ドラマ『ER緊急救命室』でロス先生の「オレの合図で移すぞ、ワン・ツー・スリー、BAANN」のワンシーンが、まさかの自分事になってしまいました。

集中治療室に駆けつけた親族に、医師から「命が助かるかわからない。たとえ命を取り留めたとしても脳にダメージがあり、障害が残る可能性が大きい」と伝えられました。
意識なく横たわる私の周りで涙しながらも、「葬儀」「脳死」「後遺症」という恐怖に怯え、「いったい誰が介護する?」「3匹の飼い猫はどうする?」とシビアな話し合いがあったようです。
ですが1週間後――私の心臓は自力で動き出したのです。

 

「倒れたのが多くの人が居合わせる都心の電車内だったのが幸いでした。ご自宅で倒れていたら、亡くなっていたでしょう。腐乱死体にならなくて、本当によかったです」と主治医のいう通り!
内側から鍵をかけた一人暮らしの密室は、安全と危険が背中合わせの環境。たとえ同居しているパートナーや家族がいたとしても、突然倒れた時に一人だったらリスクは高いです。「もしも」に日頃から備えるべきだと悟りを開きました。

ちなみに、救急車で運ばれた私の身元がどうやって判明したかです。
スマホはパスワードでロックがかかっていて使いものになりませんでしたが、財布に父の名刺を意図せず入れていたおかげで連絡がつきました。これはオススメの方法。
また、スマホはロック解除せずに119へ通報ができるだけでなく、タップすれば緊急時の連絡先の電話番号、自分の住所・血液型・服用薬・臓器提供などの登録情報にもアクセスできる機能があります。私は自分を守るために、早速設定しました。

 
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