自由に生きるためには、もっと力を抜いていい

 

右岸と左岸でも人種の違いを感じるという雨宮さんですが、日本とフランスのミモレ世代女性のあり方にもやはり違いがあると言います。

雨宮:女性はやはりパワフルというか、日本ほど人の目を気にしないですよね。例えば、白髪のマダムでもヴィヴィッドなピンクの服を着たり、ミニスカートをはいていたり。日本だと「この歳で膝は出せない」なんて思われがちですが、フランスは大統領夫人が膝上のミニスカートをはいてしまうくらいですから。歳を重ねた女性でも肌の露出をためらう雰囲気はなく、中には、「そこまで胸の谷間を見せてどうするの?」と言いたくなるくらいの人も(笑)。でも私はそういう人が嫌いではないし、潔いので、いやらしくも感じないんです。自分の良いところをアピールしたり、上手に活かすことに長けていて、だからこそ見ていてもイヤな感じにならないのでしょうね。ファッション以外でも、仕事で結果を出していれば、プライベートには口を挟ませないようなオーラがあります。「それが何か?」みたいな。そう言った自由さがあるところ、自分が好きなこと、したいことを我慢しないですむ空気感が、私的には心地いいんです。

 


そして30代、40代とパリに長く住むことで、雨宮さん自身の価値観も変化した部分があるのだそう。

雨宮:どんどん図々しくはなっていますね(笑)。日本に戻っていた時も「報道局に行くのにこんな格好?」というラフな服で出勤したりしちゃっていました。でも、そういうのがいいねって言ってくれる男友達もいるんですよ。なので、そのあたりは日本も少し変わったのかな?と思ったりしています。フランスに20年も住んだら、もう日本に合わせなくてもいいかなって、変な外国人でもいいかなって(笑)。昔はそういう人が嫌だったんですけど……でも、50歳になってまで人の顔色を窺うようなのもどうかなって、考えるようになりました。ただ、フランスの人は本当に気が強いんです。この国ではその強さが必要なのもわかるし、主張も大事なんですが、私はやはり、日本の柔らかさもすごく好きなんです。なので、カチンと来たり、イラっとしても、一度は飲み込むようにしています。フランスに住んでいても日本人なのだから、両方のいいとこどりをしたいなって。

でも、怒りを抑えるって難しいですよね。何か秘訣があるのでしょうか。

雨宮:友達には、バーっと愚痴っちゃうこともありますよ(笑)。でもその前に、違うことを色々考えてみるんです。そういうふうに言わないといけないのは、どうしてなのかな?と考えてみたり、その人のいいところを探す。すべてが悪い人って、なかなかいないじゃないですか。いいところが見つかると、よっぽどのことがない限り、悪いところをその人の個性として面白がれる余裕が出てくるといいますか……。

美しく強く、自分らしく歳を重ねている雨宮さん。どうしたらそんな生き方ができるのか、素敵な50代を迎えるためのアドバイスをぜひ!とお願いすると……

雨宮:え、私の方が教えていただきたいです! 日本の50代の方って、みなさんバイタリティがあって、仕事にも美容にも全力で取り組まれているじゃないですか。本当にすごいなって尊敬しています。なので私が何かをお伝えできるとしたら、逆にもう少し力を抜いてもいいのでは、ということぐらいでしょうか。例えばパリの人って、一度自分に似合うと思ったらずっとそのスタイルですし、それはメイクでもそう。自分の好きなものを力技で似合わせてしまうパワーをも持っているといいますか(笑)。自分の気分を上げることが大事で、人目は二の次です。以前フランス人男性が話してくれたのですが、たとえばフォーマルな場で女性が比較的自由な格好をしている時は、男性がタイやジャケットなど、ドレスコードを踏まえた服で締めればいいんだよ、と。つまり、全体のバランスが取れていればいいのだそう。そんな女性を立ててくれる考えって素敵ですし、日本でもそういった、女性が力を抜いていい場面が増えたらなと思うんです。

※撮影時のみマスクを外しています

撮影/Yas ヘア/Tomoko Ohamausing Leonor Greyl 
メイク/Yumi Endo(eightpeace)構成・文/井筒麻三子

 

後編は12月29日公開予定です。 

 
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