人生を折り返したら、柔軟に、バランスよく

 

12月28日に誕生日を迎えた雨宮さん。50歳となり、人生の折り返し地点を迎えたことで、この先10年、20年をどのように過ごしていきたいと考えているのでしょう。

雨宮:実は、あまり先を考えたことがないんです。いつも臨機応変でいたいなという気持ちがあり、パリに住んでいることも、「ずっとここでなくちゃ!」とは思わないですし。子供たちも、パリの大学に進学するかどうかわからない。そういった様子を見ていると、現在は子供がパリで就学しているのでパリに居ますが、そうでなくなったらそれでもパリにとどまるかどうかはわかりません。もちろん子供たちが手を離れた後もパリにいたかったらいるでしょうし、そうでなかったらがんじがらめにはなりたくないので、どこでも行ける自分でいたい。そこには固執せず、楽しく、友達がいて、好きなアートがある、それさえあればいいかなって思うんです。

 

その考え方は、仕事の面に置いても同様なのでしょうか?と尋ねると、「ジャーナリストの目線は保ちたいのですが」と前置きしつつ、新たなこともしてみたい、と目を輝かせる雨宮さん。

雨宮:周りの友人たちをみていても、何かをプロデュースしたりしていて、そういうことにも興味がなくはないんです。仕事が来るのを待っているのではなく、自分から色々投げかけていけたらな、いかなくてはいけないな、と。せっかくパリにいるのだから、パリの素敵なものを自分なりに伝えていくとか、ファッションも好きですから、そういった面でも何かできたら嬉しいですね。どちらかというと私は、ひとつのことに専念するより、バランスを保っていく方が自分に合っているのかなと感じています。昔、パリに行きたい行きたいと言っていた頃に五木寛之さんに言っていただいたのが、「意固地になることはない。他力本願で風に乗る。自分で起こすのではなく、波が来たときに乗ればいい。」という言葉。結果振り返ってみると、まさにそういう人生だったんですよね。無理やり何かをしようとするのではなく、その時の気分が波を捕まえられたら、乗ればいいのかなと。もちろん、待っているだけは波も見えないでしょうから、しっかりキャッチできるように、準備をしておかなくてはと思いますが。

「ひとつのことよりもバランス派」という雨宮さんは、ジャーナリストとしてだけでなく、エッセイストとしての顔も持っています。沢山の著書をお持ちですが、なんとすべて手書きで文章を書いているのだそう。

 

雨宮:後から色々書き足したりするので、パソコンだと何か間違って消してしまいそうで怖い、というだけなんですよ。もういい加減にデジタルに移行するべきで、子供たちにも呆れられているくらい。でも始めた当初は、こだわっているつもりだったんです。手書きの方が、いい文章が書けるんじゃないかなって。ただ、今も原稿用紙のストックが沢山あるので、やっぱり使いたいなと思うところもあるんですよね。そして手書きの原稿って、読み返しているとその時の感情などが蘇ってくるんです。私、写真もアルバム派なんですよ。雑誌もそう。手元に残しておきたいんです。そういったこともあって、これまでの原稿はすべて取ってありました。引越しを機に思い切って断捨離をし、だいぶ処分はしたのですけれど。

そして12月30日には、雨宮さんが司会を務める『報道の日2020』が放映されます。ジャーナリストとしての視点から、番組の見どころを教えてくださいました。

雨宮:2011年から毎年年末に放送されているのですが、報道のTBSということで、その年の一番大事なテーマを取り上げ、秘密映像や貴重な過去VTRなどからその1年を振り返りつつ、未来を考えるきっかけを提案する番組、と言ったら良いでしょうか。特に今年は、コロナウィルスという過去にない出来事により世界が一変した年でもあり、激動の21世紀を検証しながら、この先日本人としてどう動いていくべきなのかを探ります。この番組に関われることを誇りに思う情熱的なスタッフが多く、綿密な取材を重ねて作られており、そこが大好きな番組でもあります。そして司会の関口宏さんは、解説者の方々のお話を引き出すのが本当に上手な方。歴史的事象は難しいことも多いですが、関口さんがソフトな中にも鋭く、それでいて視聴者の方々にわかりやすい話の道筋をつけて下さるので、重くなることなく観ていただけると思います。私も、コロナ禍の、それもヨーロッパでも感染者の多いフランスから呼んでいただいて参加するわけですから、期待以上のものを出さなくては!と意気込んでいますので、ぜひ楽しんでご覧いただけたら嬉しいです。

『報道の日2020』12月30日(水)TBS系 午前11時~ ©︎TBS 

※撮影時のみマスクを外しています(パリロケ時)

撮影/Yas ヘア/Tomoko Ohamausing Leonor Greyl 
メイク/Yumi Endo(eightpeace)構成・文/井筒麻三子


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