【質問6】その他の原因は?


その他の原因として、食後低血圧というのもよく知られた血圧低下のメカニズムです。これは、食事をとった後に決まって血圧が下がるというものです。ご高齢の方で多く見られるものですが、食事をとると消化を助けるために、腸が活発に動き、全身の血液が腸に集まり始めます。すると、体のそのほかの部分で相対的に血液が減り、血圧維持のメカニズムの反応が遅れると、血圧が低下してしまうのです。

他にも、妊娠、ホルモンの異常、脱水、アルコール、薬剤などでも起きえます。

妊娠で起こる血圧の低下は、子どもを大切に育てていくための正常な体の反応であり、特に問題はありません。出産すると、血圧は元に戻ります。

あるいは脱水気味になるだけでも血圧は下がる傾向となります。下痢や発熱などの症状がある場合には、脱水になりやすくなりますし、夏場の運動の後なども脱水になりやすくなります。胃腸炎や風邪をこじらした時に、水分補給、塩分補給が大切なのはこのためです。また、寝ている間は水を飲めませんので、朝起きた時というのも脱水気味になりやすい時間帯です。

長風呂やアルコールも血圧低下という意味で危険になる場合があります。長風呂なら発汗で、アルコールなら利尿で脱水になりやすいだけでなく、ともに血管を拡張し、それ自体で血圧を下げる作用があります。お風呂上がりなどにめまいを経験したことがある方もいらっしゃるかもしれません。お風呂から出たら、しっかり水分補給をしてください。

薬を複数内服中の方は、かかりつけ医と薬を見直すことも大切です。血圧の薬に限らず、前立腺の治療薬やうつ病の薬なども低血圧を起こすことが知られています(参考4)。

繰り返しになりますが、症状への対処法を考える場合に、すぐに対処法を調べて近道しようとせず、ここまで述べてきたように「なぜその症状が起こっているのか?」「低血圧はどこから来ているのか?」と原因を丁寧に評価するプロセスが大切です。対処法は、その原因によって大きく異なるからです。

ここまで、低血圧によって起こる症状や様々な原因について説明させていただきました。次回は、必要な検査、それぞれの原因に応じた対処法に迫っていきたいと思います。

 

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参考文献
1 Mancia G, Fagard R, Narkiewicz K, et al. 2013 ESH/ESC guidelines for the management of arterial hypertension: The Task Force for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension (ESH) and of the European Society of Cardiology (ESC). Eur Heart J 2013. DOI:10.1093/eurheartj/eht151.
2 Huang CC, Sandroni P, Sletten DM, Weigand SD, Low PA. Effect of age on adrenergic and vagal baroreflex sensitivity in normal subjects. Muscle and Nerve 2007. DOI:10.1002/mus.20853.
3 Fedorowski A, Melander O. Syndromes of orthostatic intolerance: A hidden danger. J. Intern. Med. 2013. DOI:10.1111/joim.12021.
4 Perlmuter LC, Sarda G, Casavant V, Mosnaim AD. A review of the etiology, asssociated comorbidities, and treatment of orthostatic hypotension. Am. J. Ther. 2013. DOI:10.1097/MJT.0b013e31828bfb7f.

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