作品をより良くするために、できることは全部やる

 

そんな板垣さんの最新作が、主演ドラマ『FAKE MOTION -たったひとつの願い-』です。卓球に青春を懸ける高校生たちの戦いと友情を描いた『FAKE MOTION』。シーズン1に土方歳鬼役として出演した板垣さんは、シーズン2でも続投。今度は主人公としてドラマを引っ張ります。

 

「土方が主人公になることでこうなるんだというものを見せたいなと思っていて。シーズン1では闇が強めのキャラだった土方が、シーズン2では陰の部分を持ちつつも、徐々に陽へと変わっていく。メインを支えるサブだったキャラが今度はヒーローになっていく成長劇にしたいなと」

西東京の頂点・八王子南工業高校卓球部。その副部長を務めるのが、板垣さん演じる土方歳鬼です。同じ施設で育ち、家族同然の絆で結ばれた八王子南工業。部長の近藤勇美(森崎ウィン)が傷を負わされたことから、土方はシーズン1ではライバルだった恵比寿長門学園卓球部と連合軍を組み、大阪の天下布武学園に戦いを挑みます。

シーズン2を迎えるにあたって、板垣さんはプロデューサーと監督にある提案をしました。

「シーズン1の土方は敬語キャラだったんですけど、それをもうちょっと崩しませんかというお話をさせてもらったんです。今回、台本でも人前でファミリーへの愛を語ったり、男臭くて寡黙な土方がよりライトになった印象があって。だったら敬語じゃないところがあった方がもっと柔らかくなるなと。そういうキャラクターの変化も、シーズン1を観ていた方にはぜひ注目してほしいです」

作品はあくまで監督のもの、というのが板垣さんの考え。その上で、作品をよりよくするためにできることは全部やる。ものづくりへのひたむきな姿勢は、他の場面でも垣間見えます。

「戦いが終わったあとの締めの台詞があるんですけど、それを本番で変えさせてもらったんです」

閃きのヒントになったのは、シーズン2から出演する新キャストたち。天下布武学園の荒牧慶彦さん、廣瀬智紀さん、定本楓馬さんを筆頭に舞台を中心とする若手俳優たちがドラマの世界に参戦します。板垣さんの主戦場は、映像。外連味溢れる表現を得意とする舞台俳優たちと芝居を交えたことで、また新しい表現の面白さに目覚めました。

「所作だったり、体の使い方だったり、僕とは全然違うものが舞台をやっている方々にはあって。基本的にはそこに引っ張られずに自分の芝居でぶつかっていったんですけど、締めの台詞だけ舞台寄りというか、極端な感じでやってみたんです。そしたら、監督が使ってくださって。どんなものになっているか楽しみにしていてください」

 


『ソロモンの偽証』は自分では観返さない


『FAKE MOTION』は、絆がひとつのテーマ。ドラマの中に登場する高校生たちのような〝仲間〟をイメージしたとき、板垣さんの頭に浮かぶのは、自身にとっても思い入れの強いあの作品の共演者たちでした。

「『ソロモンの偽証』で一緒だった藤野涼子とか清水尋也とか若林時英とか。あのメンバーは、いつ会っても友達というか、幼なじみに近い感覚があります。『ソロモンの偽証』は生と死を扱った話だったので。そういうテーマに直面した仲だからこそ、根底に同じものを持っているなって気がして。あとは単純にみんないい人。撮影から6年以上経ちましたけど、今でも仲間だと思える理由はそれで十分です」