フランスにおける、日本映画の状況とは?
フランスで公開される日本映画は、新旧を通して枚挙にいとまがない。
名画座では、小津安二郎監督や大島渚監督に代表される、日本の巨匠のレトロスペクティブが定期的に催され、スタジオジブリのアニメーションについては私が語るまでもなく、老若男女に愛され、初夏のカンヌでは、日本の映画人達は常連中の常連。

最新の話題作も、月に一本位は封切されるかな?というペースで、テレビでは21時の映画放送に、どこかのチャンネルで見付けたり。こんな按配で、極度の日本映画ロス!に陥らずに済んでおります。ありがたや~。

さて、今回は、フランスで絶賛された日本映画を五本ご紹介。自粛中の今の時期に、そっと寄り添ってくれるような、静かに心に響く、そんな作品達を選びました。

海外で観る邦画の楽しみ方、私の場合
ところで!本題に入る前に、フランスで観る日本映画の、私の密かな楽しみを、ここに告白致しましょう。

それは、ポスターとタイトルであります。どちらも日本のオリジナルがそのまま使われる、というのは珍しく、フランスで作り直されたものを、公開時に知る事になるのですが、私はそこに、フランス人の目から見た≪ニッポン≫を垣間見るのです。

こちらでもご紹介する、深田監督の『よこがお』を例にとってみましょうか。

仏題は『ある看護婦(L’Infirmière)』となっており、原題とはかけ離れた、随分大胆な変更です。観客は、作品を観る前から、「この人は看護婦さんなのかなぁ」という自問を始めるでしょう。医療ドラマなら観ないわ!という人も出るかもしれません。動員にも係るリスクも承知の、ダイレクトな、強いタイトルです。

そして、仏版ポスターでは、女性の≪よこがお≫のクローズアップです(下記参照)。反射した窓ガラス?鏡?の様なものに映り込む、二人の女性の顔は同じ様で、どこか違う。タイトルとはうって変わって、観客を惹き込むような、この作品に相応しい、エニグマティックな、素晴らしい写真ではないでしょうか。

こんな感じで、フランスまで遥々やって来てくれた日本映画に、中身は変わらずとも、ちょこっとだけフランス風にラッピングを変えて出会えた時、私は心から幸せを感じ、リボンを解きながら、独り妄想を繰り広げるのです。

ちなみに、こちらでご紹介するポスター達、全てがフランス版になっておりますので、気になった方は、日本のものと比べてみて下さいね。

出典:unifrance

【あん】
河瀨直美監督作品。ドリアン助川原作。2015年カンヌ映画祭「ある視点」部門オープニング作品。2015年度全国映連賞監督賞受賞。第39回日本アカデミー賞主演女優賞受賞(樹木希林)。その他国内外の賞を総なめ。原作は、第25回読書感想画中央コンクール(中高生の部)で指定図書にもなったという。
人間の優しさと希望に満ち溢れた映画。フランスに、どらやきブームが巻き起こった?!かどうかはさておいて、とにかく必見。こちらでは、パリ同時多発テロの頃に公開され、私もこの作品に沢山の勇気を貰いました。2015年公開、1時間53分。

 

フランス版ポスター 出典:unifrance
日本版ポスター 出典:yahoo映画

【よこがお】
深田晃司監督作品。日本社会、メディアの在り方を、事件の加害者と被害者、その家族を通して映し出すドラマ。フィクションでありながらも、色んな意味でのリアリティに驚く。何と言っても筒井真理子さんの美しさが際立つ。
私は同行したフランスの友人から、上映後に質問攻めにあった。「彼女がいったい何をしたというんだ?!」2019年公開、1時間21分。

 

出典:unifrance

【ファミリーロマンス社】
ヴェルナー・ヘルツォーク監督作品。カンヌ映画祭スペシャル・スクリーニング上映作品。ドイツ人監督から見た、不思議の国ニッポン。全編日本語でフィルムにおさめた、ドキュメンタリータッチのフィクション。
『ファミリーロマンス社は、誰かの代わりになる演者をレンタル出来るという、日本に実在する企業。あなたは御存知でしょうか?』
主演の石井裕一さんは、実際にこの会社の社長さんでもあります。家族とは、友人とは?人間関係とは何か?現代の孤独社会を露わにした、問題作。2019年公開、1時間39分。

 

出典:unifrance

【ワンダフルライフ】
是枝裕和監督の初期の作品。ナント三大陸映画祭グランプリ、サン・セバスチャン映画祭国際映画批評家連盟賞受賞。他多数。サンダンス、ロッテルダム正式招待作品。キャストの豪華さ、渋さが凄いな。ARATAさん♡♡
フランス公開タイトルは『After Life』。日本人の死生観の繊細美が、フランス人の度肝を抜いたという。家族でも一人でも、幅広い年代にお勧めの良作。1999年公開、1時間28分。

 

出典:unifrance

【岸辺の旅】
黒沢清監督作品。第68回カンヌ映画祭「ある視点」部門監督賞受賞。他多数。第89回キネマ旬報ベストテン日本映画5位。
私が好きで好きでどうしようもなく大好きな日本人監督はこの人。キーワードは、ポエティック、ファンタジー、そして奇怪。どうか心の片隅に、黒沢清監督を。フランスでも絶大な人気を誇り、作品は必ず公開されている。先に書いた『ワンダフルライフ』と同様に、日本人の死生観が表現されている、芸術作品。

出典:unifrance

深っちゃんと浅野の夫婦役が絶妙に良い。大人向け。(ちびっ子の皆さん、大人の世界って、こんなに素敵なんです。早く大きくなってね!)2015年公開、2時間8分。二時間を超える大作。どこかを旅してきた様な、不思議な感覚に包まれる。

カンヌでも注目を集めたミモレ世代の星♡深津絵里さん。いつも装いが素敵!出典:allocine

自粛de映画シリーズ、好評につき継続決定!
次回もお楽しみに(^^)/