気負いなく続けるのにちょうどいい「週1ヴィーガン」


とはいえ決して気張ることなく、ヴィーガンメニューを臨機応変に取り入れるのが杉山さん流。

「食べることは人生の楽しみの一つでもあるので、やはり病気でもない限りは極端に食事制限をすることはないかなと。ただ、女性というのはいつまでも若く美しくありたいと願うものですよね。それなのに、30代とは違って40代になると、食べたら食べた分だけ身体に肉がつくし、簡単には落ちてくれなくなる(笑)。実際、すぐに体重を3kg落とそうとしてもなかなか難しいでしょう?でも、1㎏くらいなら1日でも何とか元に戻せるもの。だから、とくに40代からはそういう微調整が大切で、それには時々取り入れる野菜中心の食事が有効だと思うんです。

私は家族や友達と美味しいご飯を食べるときには何でも好きにいただきますが、体調と美容のことを考えるようになってからは、1週間の中で食事の辻褄を合わせるようにしています。それならストレスも溜まらない。“週1ヴィーガン”がちょうどいい、というのはそういうわけです。1日中というのがストレスになるようなら、毎食ではなく、1食取り入れるだけでも構いません。たとえば昨日のディナーで食べすぎたから、今日のランチはヴィーガン料理にしようという具合。仮に毎日、朝昼晩と食事をするとしたら、週に21回の食事を取ることになります。そのうちの1回をヴィーガンにするくらいなら、そう難しいことではありませんよね。無理せずに、できる範囲のところから始めてみたらいいと思います」

下田に訪れるようになってから、以前よりもいっそう環境問題への関心が強くなったとか。とくに今気になっているのはフードロス問題。「企業だけでなく、家庭でもフードロスを出さないような提案をしていきたいですね」

確かにヴィーガンやベジタリアン料理が身体によく、環境や動物に優しい食だと分かっていても、ストイックになってしまうと気分的に追い詰められてしまうもの。でも、杉山さんの提案する週1ヴィーガンなら無理せずに続けていけそうです。ただ、ヴィーガン料理というと味が淡白なんじゃないか、栄養が不足するんじゃないかという心配もあるのが正直なところ。

 

「確かにそういう声はよく聞きますよね。でも、私は“食は五感で楽しむもの”だと思っていて。以前受講したセミナーで聞いたのですが、五感による影響は視覚が8割以上で、それ以降に聴覚や臭覚、触覚と続いて、味覚は何とたったの1%以下なんです! もし料理の見た目や匂い、食べたときの音などを何も感知できずにただ味をみるだけだったら、美味しさが伝わってこないということ。だから私は、まずそのお料理の彩りを美しく見せるように心がけています。たとえば、トマトの赤、葉物のグリーン、お米やお豆腐の白など……。最低でも3色以上を入れてカラフルにすることで、自然と栄養のバランスもよくなるんです。

それから以前、有名なマクロビオティックのスターシェフに教えていただいたのは、『柔らかい野菜ばかりだと満足感がないから、歯ごたえを良くすることが大事』だということ。だから、私は調理法を工夫したりよくナッツを使って、硬い食感を取り入れるようにしています。また、クリームシチューを作るなら、牛乳や生クリームの代わりにアーモンドミルクかココナッツミルクを入れる。そうすると、ライトな風味で生クリームよりも胃に優しいのに、ちゃんとコクも出て美味しい料理になります。そんな風に、美味しい野菜料理を作ったら、それがたまたまヴィーガンだったというレシピを、ミモレではご紹介していきたいですね。ただし、美味しいという味覚は人それぞれで好みもあるもの。だから私のレシピのままではなく、もちろん好みに応じてアレンジしていただいて構いません」