米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。

Netflix映画『ザ・プロム』独占配信中

Netflixでミュージカル映画が配信されると聞いて、とても気になっていた『ザ・プロム』。でも世界中で大ヒットした『glee/グリー』に正直ハマれなかったので、同じ監督が手がけた作品と知って、実はそんなに気が進まなかったんです。
コメディタッチの作品はユーモアのセンスが合わないと、最後まで観るのはキツイしなぁ……なんて思ったりもしたのですが、あのメリル・ストリープが初めてNetflixオリジナル作品に挑戦したドラマだと聞いたら話は別! 
大人も楽しめる作品に違いないと期待を込めて観てみました。

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ディーディーとバリーは予算をつぎ込んだ新作が酷評されて、ピンチに陥った人気舞台俳優。ふたりは、インディアナ州の女子高生、エマが同性の恋人とプロムに参加することをPTAに反対されたというニュースを聞きつけます。
そこで思いついたのは、自分たちのイメージアップのためにエマに救いの手を差し伸べること。同じくキャリアが低迷しているアンジーも一緒に、ニューヨークから田舎町へと乗り込んでいくという物語が描かれていきます。

 

最初にメリル・ストリープ演じるディーディーがブロードウェイの劇場の前で踊るところから、ミュージカルのわかりやすい楽しさをギュッと詰め込んだシーンがたっぷり! メリルは歌って踊ってさすがの迫力で魅せてくれます。

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でもアンジーを演じたニコール・キッドマンは、ちょっと物足りなかったかな。彼女が『CHICAGO(シカゴ)』のパロディを披露するシーンがあるのですが、振り付けをしたボブ・フォッシーについて語るなら「登場のフォッシーウォークをもう少し練習して欲しかった」という気持ちに。
自分のことは完全に棚に上げて「ひとこと言っていいですか!?」状態になってしまったのは、私の“フォッシー愛”ゆえ、ということで許してくださいね。と言いつつ私も練習しなきゃ(笑)。

フォッシーの振り付けはジャズやバレエの枠を超えているし、人間の普通の動きとはかけ離れたものが多くて、ものすごく難しいのは確か。手の使い方や脚の広げ方など、無理な動きのひとつひとつが官能性につながっている振り付けなんです。

劇中にはアンジーが「“ザズ”はスタイルと自信、“ザズ”を見つければ恐怖を支配できる」と歌いながらエマを励ますシーンも。“ザズ”という言葉を初めて聞いたのでフォッシーに詳しいCHICAGOメンバー達に聞いたら、みんな知らないとのこと。
この言葉は本当に存在しているのか、フォッシーの精神を歌うために作られた言葉なのかも気になりました。

豪華スターが歌って踊る華やかなシーン


そしてこのドラマの軸になっているのは、差別の問題。どこの国でもいろいろな形の差別の壁が残っている今、こうやってハリウッドスターたちが前向きなメッセージを発信してくれるのは、とても心強いことですよね。アンジーがレズビアンのヒロインとベッドの上でアイスクリームを食べながら、仲良くおしゃべりをする姿も素敵でした。年齢を超えて心が通じ合う、ハートウォーミングなシーンになっています。
バラエティの司会者としてもおなじみのジェームズ・コーデンが演じたバリーの柔らかい存在感もよかったし、エマに「自分の方法でやります」と言われ、別荘を手放してまで彼女を応援しようとしたディーディーがキレるシーンも楽しかった(笑)。

ポジティブな姿勢をエンタメとして届けてくれる、ミモレ世代でも楽しめるミュージカルだと思います。

取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)

 

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