コロナ禍の時代に映画を作り、観るということ


役所さん:この作品の撮影はコロナからちょうど逃げ切ったという感じで終わりましたが、こうなると「ウィズ・コロナ」で、少なくとも皆で乗り越えて行かなきゃいけない。どうにか撮影して映画を作っていかなければいけないし、観客の皆さんに「劇場へ足を運んで下さい」という呼びかけをやっていかなければいけない。

西川監督:昨年の6月、スタッフ、キャストみんなで観た初号試写では、スクリーンの中で当たり前にわめきあったり、抱き合ったりしている画を観て「こうやってベタベタ喧嘩ができるって、なんてかけがえのないことだろう」と心底思いました。人と人が集まったり、触れ合ったり、そういうことを「また取り戻したい」と切に願います。そして世界中の人が、劇場で映画を観ることも取り戻すべきことのひとつだと思います。

役所さん:やり続けなければいけない。映画と劇場を次の時代に残していかなければいけないという気持ちがありますよね。

西川監督:人が集まり、一緒に物を観るという体験の素晴らしさ、豊かさみたいなものをう一回取り戻して、先につなげていくためにも、この『すばらしき世界』を映画館で観たいと思ってもらえるようにしたいです。

 

西川美和  Miwa Nishikawa
映画監督。1974年生まれ。広島県出身。オリジナル脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』(02)で第58回毎日映画コンクール脚本賞受賞。長編第二作『ゆれる』(06)は第59回カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品され、国内で9ヶ月のロングラン上映を果たす。つづく『ディア・ドクター』(09)で第83回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位を獲得。その後、『夢売るふたり』(12)、『永い言い訳』(16)とつづけてトロント国際映画祭に参加するなど海外へも進出。その一方で小説やエッセイも多数執筆しており、『ディア・ドクター』のための僻地医療取材をもとにした小説「きのうの神さま」、映画製作に先行して書いた同名小説『永い言い訳』がそれぞれ直木賞候補となるなど高い評価を受けている。連載中のエッセイに、本作の制作過程を綴った『スクリーンが待っている(小学館)』がある。

 

役所広司  Koji Yakusho
俳優。95年に原田眞人監督『KAMIKAZE TAXI』で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。96年『Shall we ダンス?』(周防正行監督)、『眠る男』(小栗康平監督)、『シャブ極道』(細野辰興監督)の3作品で国内主演男優賞を独占。東京国際映画祭主演男優賞を受賞した黒沢清監督の『CURE』(97)、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『うなぎ』(97/今村昌平監督)など、国際映画祭への出品作品も多い。12年、紫綬褒章を受章。近年では『三度目の殺人』(17/是枝裕和監督)、『孤狼の血』(18/白石和彌監督)などに出演。『孤狼の血』で3度目の日本アカデミー賞•最優秀主演男優賞受賞。『すばらしき世界』ではシカゴ国際映画祭で最優秀演技賞を受賞。小泉堯史監督作品『峠 最後のサムライ』が21年6月18日に公開予定。

<映画紹介>
『すばらしき世界』
2021年2月11日(木・祝)全国ロードショー

映画『すばらしき世界』より。©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

『ゆれる』『ディア・ドクター』などで数多くの映画賞を受賞し、これまで一貫して自身の原案、オリジナル脚本に基づく作品を発表してきた西川監督が、直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説『身分帳』に惚れ込み、長編映画としては初の原作ものに挑んだ作品。小説の時代設定を現代に置き換え、実在の人物をモデルとした主人公・三上の数奇な人生を通して、人間の愛おしさや痛々しさ、社会の光と影をあぶり出す問題作。

主演を務めるのは本作『すばらしき世界』で今年の第56回シカゴ国際映画祭インターナショナル コンペティション部門にて最優秀演技賞を受賞した当代随一の名優、役所広司。その他、共演に仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、安田成美らが名を連ね、名実ともに豪華なキャスト陣が西川監督のもとに集結。

 

<ストーリー>
下町の片隅で暮らす短気ですぐカッとなる三上(役所広司)は、強面の見た目に反して、優しく真っ直ぐすぎて困っている人を 放っておけない男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯だった。一度社会のレールを外れるも何とか再生しようと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)がすり寄りネタにしようと目論むが……。 三上の過去と今を追ううちに、逆に思いもよらないものを目撃していく――。

『すばらしき世界』
公開日:2021年2月11日(木・祝)
監督:西川美和
脚本:西川美和
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、安田成美
原案:佐木隆三著「身分帳」(講談社文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画

©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会


役所広司さん着用:ジャケット、パンツ/ポロ ラルフ ローレン

<衣装問い合わせ先>
ラルフ ローレン 表参道 tel. 03-6438-5800
 

撮影/目黒智子
 ヘアメイク/千葉友子(西川監督)、
勇見勝彦(THYMON Inc.・役所さん)
 スタイリング/安野ともこ(役所さん)
 取材・文/渥美志保
 構成/川端里恵(編集部)

 

 

インタビュー前編「【西川美和監督×役所広司】ベストセラーやドラマのリメイクじゃない映画をつくる意味」>>

 
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