ジェンダー、人種、民族、国籍、階層、セクシュアリティ、年齢、病気、障害など、私たちは一人ひとり、様々な要素から成り立っています。ある要素ではマジョリティだけど、ある要素ではマイノリティで、ある面では強者だけど、別の面では弱者。年齢のように、今は強者でも時間の経過とともに弱者になっていく要素もあるし、日本ではマジョリティの人種だけど海外に行ったらマイノリティになってしまうことも。私たちは皆、複雑な組み合わせの、立場が変化し続ける存在なのです。誰も、完璧な強者ではないのですよね。


中には「私は差別されたことがない」という女性もいるでしょう。「むしろ、女で得した。男社会で大事にされている」と。20代の頃は私もそう思っていました。そういう人はぜひ「私は差別されたことがなくて快適なのに、世の中にはなぜこんなに女性差別に声を上げる人がいるのだろう?何か私には見えていないものがあるのかな?」と考えてみてほしいです。もしかしたら、女性差別を言い立てるのはできない女のヒガミとか、言い訳だと思ってしまっているのかもしれないですね。自分は優秀で努力家だから差別されないのだと。それも視点を変えて「私と同じように優秀で努力家の女性は、他にもたくさんいるはずだ。ではなぜごく限られた数の女性しか、才能や努力を認められていないのかな?」と考えてみると、女性を排除している社会の構造に気づくはずです。2018年に発覚した医学部の不正入試はその典型例です。意図的に女性を不合格にしていたのですから。


日本では1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性には「既存のオトコ社会で男性並みに活躍するなら対等に扱うよ」という道が開かれたのですが、それは果たして本当にフェアなのか? と今では多くの人が歪さに気づいています。既存のオトコ社会で生き残れないなら、対等な扱いは諦めろって、おかしいですよね。「ルールをわきまえろ、身の程をわきまえろ」と言われてボロボロになって働くのでは、誰も幸せになれない。女性差別をなくすのは、いろんな事情を抱えた私たちが、それぞれに人間らしく生きることができる社会にするため。女性が生きやすい社会は、誰にとっても安心できる社会なのです。


もし身の回りに「男性だって差別されてる」「女性で損したことはない」という人がいたら、一緒にそんな話をできるといいですね。潮目の渦に巻かれて、同じ未来を目指すことができるんだよと。

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