③ 「借金は長く持つ時代」現金があれば……と後悔することも

住宅ローンの繰り上げ返済、後で損する3つのパターン_img0
 

中村:仮に100万円や200万円など、繰り上げ返済するお金があるのであれば、早いうちにiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めていただく方をおすすめします。収入がある現役時代なら掛け金が所得控除になる税制上のメリットが大きいので、一つの方法だと思います。

仮にiDeCoで月2万円積み立てれば、年間で24万円の所得控除になりますので、もし所得税が5%、住民税が10%かかっている人なら、あわせて15%分。24万円の15%は、3万6000円ですので、それだけ税金が浮く計算となります。今は超低金利なので、繰り上げ返済をしても3万円以上のメリットは出ないのではないでしょうか。

40代半ばの方なら、15年間くらいiDeCoで資金を貯めていき、60歳以降に繰り上げ返済、または一括返済するという方法もあります。

 

西山:「借金は早く返した方がいい」と思う人が多いですが、住宅ローンをあえてゆっくり返すということですね。40代、50代の方は、お子さんが高校生や大学生になって教育費がかかる方も多いと思うので、手元に現金があることは大切ですよね。

片岡:ローン、つまり借金は早くなくなったほうがよさそうだと思っていましたが、そうではない時代なんですね。

中村:はい、もちろんローンが少なくなることや無借金経営は安心なのですが、人生100年という長生きの時代なので、安心な道を考えておく必要があります。

特に60歳以降で働き方が変わることにも注意が必要です。同じ職場で継続して働けたとしても、嘱託契約で年収が半分になるケースも多いです。社会保険からお金が出る制度(高年齢雇用継続給付)もありますが、それでも現役時代と同じような収入を60歳以降もキープすることは難しいでしょう。

60歳になり、いざ銀行口座に入ってくるお金が減ったときに、手元の現金が減ることは怖いものです。住宅ローンが完済していれば別ですが、繰り上げ返済をしていても、もし70歳までローンが続くとなると、60歳以降の資金繰りが苦しくなると思います。

西山:「数年前の、あの繰り上げ返済をした200万円が今あったらいいのに……」と思っても、取り戻せないですものね。

中村:そうならないように、60歳以降どうなるかを長い目で考える必要があります。40代や50代のうちは、資金に十分な余裕がある方以外は、繰り上げ返済よりも手元に現金を残しておく選択肢の方がいいケースもあると思います。

いずれにしても、家計状況や今後大きなお金を使う予定があるかなど、人それぞれ異なります。マネープランを立てたうえで考えることをおすすめします。
 

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)
この記事は2021年3月1日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

 

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