心を砕かれても「返せ」なんて言わない

 

これだけお金を使ったのに。これだけ現場に通ったのに。と恨み言が口から出そうになるときもあるかもしれませんが、基本的にそれらは自分がしたくてやったこと。誰に強制されたわけでもないのです。

 

まあ、推しも推しでたまに「僕を知っている人にはぜひ来てほしいです」みたいなコメントをして、オタクを煽ってくるから厄介なのですが、それはそれであちらも商売。推しにそんなことを言われてしまったら、今回の現場はスケジュールも厳しいし流そうかなと思っていたものを無理にでもお金と都合の算段をつけますし、必要もない写真集をあと5冊積んだりしてしまうのですが、それも最終的にはやはり自己判断。自分がやりたくてやった、としか言いようがないのです。

だから、のちのちどれだけクズであることがバレようとも、あっさり結婚しようとも、(考えるだけで震えますが)突然芸能界から引退しようとも、「僕のお金と時間を返して」と言えないのが推し活。それを不毛と思うなら純金積立とかした方が絶対にいい。それまでにもらった楽しい思い出とか、高揚感とか、幸せとか、そういったベネフィットを考えれば少なくとも対価としてはイーブンなはずだからです。

横川 良明さん

1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。mi-molletでの連載「推しが好きだと叫びたい」をベースにしたコラム本『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)が1月6日に発売。twitter:@fudge_2002

 

『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』
著者:横川良明 サンマーク出版 1540円(税込)

「推し」とは、ファンであることを超えて、誰かにお勧めしたくなってしまうほどに、大好きな人や、もの、キャラクターのこと。若手イケメン俳優という「推し」ができたのを機にオタク生活に足を踏み入れた筆者が、「推し」が放つ不可抗力的な魅力と、「推し」に魅せられたオタクの行動を、冷静な視線を保ちながら熱く語り尽くします。既に「推し」のいる人には「あるある」エピソードが満載。まだ「推し」にめぐり会えていない人が読んだとしても、説得力のある考察の数々に膝を打ちっぱなしの一冊になるでしょう。


構成/さくま健太

第2回「オタクの世界は優しさあふれるユートピア!「推し」が心にもたらす効果とは」3月3日予定
第3回「見返りを求めない愛の正体は? こじらせ気味なオタクの恋心を探る」3月7日予定