結婚した「推し」を受け容れるには時間が必要

 

しかも、結婚のおそろしいところが、結婚を発表したその一瞬で終わりではなく、その後も結婚により変わってしまった推しを直視し続けねばならないことです。夜中にツイートが流れてきたところで、今までなら「わ、まだ推しが起きている」とテンションが上がっていたものが、結婚後は「あ〜、今これ横に伴侶がいらっしゃるのか〜〜」といちいちお相手の存在を向こう側に見てしまうし、もし推しが「うちの嫁が」と言い出そうものなら、「あ、配偶者のことを嫁とか言うタイプなんだ」としなくてもいい幻滅をし、「そもそも嫁とは息子の妻のことを指すものであり、配偶者に用いるのは本来の意味を考えると不適切」とか日本語警察しそうで怖い。

 

公園で配偶者とブランコに乗っていたり。いつかお子様ができたら、お子様を肩車したり、運動会のために朝から場所取りをしているのを週刊誌に撮られたり。あとひと山ふた山越えたら、そんな配偶者がいる状態の推しに対して新しい喜びを見出せるようになるのでしょう。が、それにはもう少し時間がほしいところ。

「君と好きな人が100年続きますように」のフレーズを怨念を込めずに歌えるようになったら、また新しい推し活の楽しみを見つけられそうです。

横川 良明さん

1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。mi-molletでの連載「推しが好きだと叫びたい」をベースにしたコラム本『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)が1月6日に発売。twitter:@fudge_2002

 

『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』
著者:横川良明 サンマーク出版 1540円(税込)

「推し」とは、ファンであることを超えて、誰かにお勧めしたくなってしまうほどに、大好きな人や、もの、キャラクターのこと。若手イケメン俳優という「推し」ができたのを機にオタク生活に足を踏み入れた筆者が、「推し」が放つ不可抗力的な魅力と、「推し」に魅せられたオタクの行動を、冷静な視線を保ちながら熱く語り尽くします。既に「推し」のいる人には「あるある」エピソードが満載。まだ「推し」にめぐり会えていない人が読んだとしても、説得力のある考察の数々に膝を打ちっぱなしの一冊になるでしょう。


構成/さくま健太

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