これが幸せだと決めつけない。死ぬ間際に幸せだったと思えればいい


――中田さんは「50代はいいわよ」「60代はいいわよ」と周りに言われながら年齢を重ねてきたとおっしゃいました。実際に年をとってみて幸せだなと思うことはありますか。

中田 やっぱり今回のような素敵な作品に出会えたときですね。この仕事を続けなければ出会えなかった役ですし、エリーさんは今の私だからいただけた役。続けてきてよかったなと思います。

 

この間、あるお店に行ったら、男性のご主人が「『ジルバ』観てますよ」と声をかけてくださって。女性だけじゃなくて、男性にも届いているんだとうれしくなりました。あとは、イタリアへオペラを学ぶために留学している女性の方からファンレターをいただいて。コロナでロックダウンにある中で、『ジルバ』を観て感動したと便箋5枚も感想を書いてくださったんです。

そんなふうに視聴者のみなさんの心のサプリメントになっている作品に携われていることは、本当にありがたいことですよね。

 

――長く続けてきているものがあることが、中田さんの幸せの秘訣なのかもしれませんね。

中田 そうかもしれません。ただ、私、これが幸せだとあまり決めつけたくないんですね。

 

――どういうことでしょうか。

中田 これが幸せだと決めつけてしまうと、そうじゃないときにネガティブになってしまうでしょう。だから私は死ぬ間際に私の人生って幸せだったんだわと思えればそれでいい。夢枕にこれまでのことを思い出して、うん、幸せだったわと思えることが本当の幸せだという気がします。

――長く生きていれば、人生はいろんなことがありますもんね。

中田 ありますよ。私もバツイチですからね(笑)。でも一気に沈んでしまえばあとは上がるだけですから。苦しいときほど、早く沈めと思っていました(笑)。底をついちゃえば、あとは上がるだけ。中途半端だから苦しいんです。だから当時も、早く底までつきたいと思っていました(笑)。

――人生の先輩として教えてください。中田さんは悲しい出来事や感情にどう対処していますか。

中田 これは私が女優だからかもしれないですが、今日も笑っていないなという日は鏡の前で笑う芝居をします。タイマーをかけて、3分間ずっと笑い続けるんです。大変ですよ、3分間も笑い続けるのは。もう汗だくになりますから(笑)。でもね、2分くらい過ぎると本当に楽しい気持ちになってくるんですよ。そうやって自分の感情を立て直していましたね。