「親子なら、言葉がなくても分かりあえる」というわけではない、ということですよね。

私は親ではないので親の気持ちを100%理解するのは難しいんですが、そういう形で親子が互いを理解しようと努力することはすごく大事だと思います。家族の間で、辛いことや衝突が多いのは、それだけ感情がこもってしまうから。例えば見知らぬおじさんに「バカ」と言われたら、その場ではムカっ!としてもそこで終わり、溜め込んだりしないですよね。でも同じことを家族から言われると、すごく深い傷として心に残ります。そうやって傷つかないようにするには、感情を削ぎ落して、言われた内容だけ考えること。私はそういう時に「この人は知らないおばさんだ」と思うことで、家族を「他人化」する練習をして、それからは家族との関係がより楽になったと思います。もちろんこのことは、当事者の家族には絶対に知られないようにしなければいけません。心の中で思うだけ。

これは飽くまで私のやり方で、その人それぞれに合ったやり方があると思います。お母さんの立場であれば、全く言うことを聞かない子供を「これはよその子」と思えば、その場で高ぶった感情が少し落ち着くかもしれません。家族だからぶつけてしまいがちなキツい言葉も、少し距離のある人には使わないと思いますし、言ってはいけないことを言わないで済むとも思います。

 


相手に対する敬意、みたいなものですね。

愛から発したはずの言葉が、言い方ひとつで上手に伝わらないこともあります。他人に対するマナーと同じで、家族に対してもマナーを守ることが大事。愛しているからこそ、意識的に距離を取る必要があると思います。
 

 

<書籍紹介>
『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。寂しくなくて疲れない、あなたと私の適当に近い距離』

ダンシングスネイル(著), 生田美保(翻訳)

大人になった私たちに必要なのは、人にもたれかからない、適当な距離。私が望み、選んだ、健康的な関係。『怠けてるのではなく、充電中です。』の著者最新刊! 日韓で多くの共感を呼んだ著者が語る、人間関係に疲労してしまった人のための「関係デトックス」。

取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)

インタビュー前編「ストレスを溜めない「人との“適当な”距離の持ち方」。孤立せずにひとりを楽しむには?」>>