ミモレでは2021年に公開されたインタビューのうち、特に人気があった記事をご紹介します。よろしければぜひお楽しみください。元記事は3月4日に公開されたもので、作品の情報等は公開当時のものです。

「オチがすごい!」と話題になり、累計27万部を売り上げた短編小説『世にも奇妙な君物語』が、WOWOWオリジナルドラマとして3月から放送されます。

この『世にも奇妙な君物語』は1話完結のオムニバスストーリーで、全5話を収録。女性フリーライターが社会人の男女4人で暮らすシェアハウスへの潜入取材を試みる『シェアハウさない』や“コミュニケーション能力促進法”なる法律のもと、大学生が能力調査会に挑む『リア充裁判』など、知らないうちに現実と奇妙な世界への岐路に立たされた主人公たちを描いた作品です。

 

田中麗奈さんは、ネットニュース編集部の世界で自分を肯定しようと必死にあがく女性編集者を描いた『13.5文字しか集中して読めな』の主人公・本田香織を熱演。この女性は結婚して子どもがいる母親であり、同時に仕事にプライドを持ち大好きな出版業界で働くキャリアウーマンとして描かれています。一昨年末にお子さんを出産され、お仕事に復帰されたばかりの田中さんに、このドラマや主人公の女性に対する思い、そして子育てと女優業の両立について、お話を伺いました。

 


憎まれ役だったとしても、自分だけはその人物を愛してあげたい。


田中麗奈さん(以下、田中):最初に脚本を読んだときは、最後のオチにゾッとしました(笑)。でも痛快な感じがとても気持ちよくて、ある意味スカッとする感じで爽快感もありました。もちろん奇妙ではあるのですが、何だか自分のモヤモヤしたものがクリアになった感じがあり、とても楽しく読みました!

田中さんが演じた主人公の『本田香織』は子育てに励みながら、同時に憧れの職場で仕事もしっかりと両立している女性です。

田中:自分に実際に起こったらかなりゾッとする展開なんですが、第三者から観ると痛快なオチ。そして、少しずつオチに向かっていく過程が面白く、最後まで辿り着いたときには最初とはトーンが違っていて、強烈なコントラストが生まれていることに気が付くんです。主人公の本田香織という人物が持っている高揚感が徐々に優越感になり、どんどん傲慢になっていく部分をきちんと描かないといけないなと思いました。

本田香織という女性を、田中さんはどのように捉えていたのでしょうか?

WOWOWオリジナルドラマ『世にも奇妙な君物語』、田中麗奈さんが主演を務める「13.5文字しか集中して読めな」より

田中:彼女からは常にアドレナリンが出ている印象を受けました。仕事をしている喜び、そして自分が仕事でノッているんだ!という高揚感があって、それでテンションが高くなっている状態なんだと思うんです。私も仕事が大好きなので、家では味わえない刺激というのでしょうか、アドレナリンが出ている感じはよく理解できます(笑)。もちろん自宅での生活も刺激に満ち溢れていますが、それとは少し違って、仕事で受ける刺激は男性ホルモン寄りなのかな。香織は身近にもいそうな女性像でした。香織のように、旦那さんに対して「私の方が頑張っているじゃん!」って言いたくなる瞬間も分かりますし、その“私も頑張っているの”という気持ちを盾に旦那さんを責める感じ(笑)、演じていてとても楽しかったです(笑)。

田中さんはご自身が演じる役に対して、常に「愛情を持つ」ことを大切にしているのだと、教えてくださいました。

田中:口にすると少し恥ずかしいですが、自分の中では役柄に対する“愛”を持つようにしているんです。どんなに憎い役であったとしても私だけはその人物に無関心にならないように、最後の最後まで見捨てないで拾い上げるー―、そんな気持ちで役に愛情を注ぎたいと思います。頂いた役柄に入るときには自分と共通しているところや似ているところを探して芝居をするわけではなく、脚本に書かれている人物像に自分自身が入っていき、そこからどんどん詳細が膨らんでいくような感覚です。今回の本田香織という役に関しても同じですが、仕事を持つ母親という意味では身近でもありますし、理解できる感情はたくさんありましたね。

役作りというのは、「自分の正義感や価値観に左右されるものではない気がします」と田中さん。『奇妙な君物語』で演じられたような、一風変わった世界観の作品では、いわゆる普通の作品とは何か役作りに違いがあるのでしょうか?

田中:今回はオチがはっきりしていて衝撃的だったので、そこをゴールと捉えて、そこにたどり着くまでの足取りや彼女の原点との落差を考えながら演技をしました。落差は激しいほうが面白いと思うのですが、でもその激しさが不自然ではいけないと思うんです。最終的に足元をすくわれる原因は彼女のなかにちゃんと存在してます。徐々に彼女自身の温度が上がっていったようにゴールから逆算して、役作りをしていきました。
 

原作者・朝井リョウさんのインタビューはこちら>>

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