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渡辺ミキ社長、私よりも“青木さやか”を諦めなかった理由を教えてください

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青木:社長は「青木さやか」を諦めませんでしたよね。私よりも私を諦めない人がいることは結局感謝という言葉しかないです。

渡辺:そういえば、ロンブーの淳さんや三谷(幸喜)さんとの対談でも“女優”の話に触れていましたよね。私は、青木さやかは女優としての才能がすごくあると思っていて。青木を主演にするとしたらどんな原作がいいか考えて、売り込みもしていたのよ。

 

青木:えっ、そうなんですか!?

渡辺:乃南アサさんのシリーズがいいのでは!? と思ってテレビ局のプロデューサーさんに持っていったら、「それはもう決まってるんです」って言われて。食い下がってみたんだけど、「こういう作品はストレートに、主演女優たる女優さんがやった方が面白いんです」って。なるほど、と勉強して帰ってきました(笑)。

 

青木:ありがとうございます。“女優”としての技術はまだまだですが、最近は自分が何をやればいいのかがやっと理解できるようになってきた気がします。赤堀雅秋さんの「世界」に出演させていただいた時、赤堀さんに「青木さんはバラエティだと自分で責任を取ろうとするでしょう。芝居も“どうしたらいいですか”じゃなく、自分で考えてやった方がいいですよ」って言われて。そこから、自分で作り上げるんだっていう意識でお芝居に向き合えるようになって、勘どころを掴めてきたというか。

渡辺:そうだね、一歩ずつね。三谷さんも青木のことを気にかけてくださっているよね。別の俳優が出演させていただくときに「今度○○がお世話になります、よろしくお願いします」ってご挨拶すると、「青木さんもよろしくお願いしますね」って三谷さんから言われるんです。お互いに、青木を押し付け合っています。


青木:私を押し付け合わないでください(笑)。

渡辺:青木もたくさんの舞台に出演させていただいているうちに、「習うより慣れろ」で女優としての技術がついてきたことは、私も実感しています。“まさかの!”ついてきた。

青木:“まさかの!”、自分でもそれは思います。三谷さんの舞台でよくお世話になっているシス・カンパニーの北村(明子)さんも、「青木ちゃんは、大体は間違っているけどすごく勇気がある。そこがいいわ!」って言ってくださって。「だけど、普通にやってちょうだい!」とも言われますけども(笑)。

渡辺:青木は誰かに「この通りにやって!」って言われるとできないよね。ダンスもすぐにでも踊れそうなイメージなのに、やらせてみると周りが引くぐらい下手だったり。それでも、ひとつずつでもできるようになってきたのは素晴らしい進歩。青木は感性も豊かだし、センスもいい。そして、人として内側から滲み出てくるものがある。女優として舞台に立つ青木さやかを見て、私はそんなふうに思っているのよ。
 

渡辺ミキ Miki Watanabe
1960年、東京都出身。女優、ミュージカルプロデューサーを経て、1987年渡辺プロダクション取締役に就任。2000年にワタナベエンターテインメントを設立。俳優・ミュージシャン・芸人など数々のアーティストを発掘、育成。主なプロデュース作品は『宮本武蔵(完全版)』(第24回読売演劇大賞優秀作品賞受賞)『ザ・ヒットパレード〜ショウと私を愛した夫〜』『関数ドミノ』『PIPPIN』等。9月には本多劇場にて『物理学者たち』を上演。昨年よりコロナ禍で設立された「緊急事態舞台芸術ネットワーク」世話人を務める。


青木さやか Sayaka Aoki
1973年、愛知県出身。フリーアナウンサーとして活動、その後タレントの道へ。以降、バラエティ番組やドラマ、エッセイの執筆など幅広く活躍中。近年はYoutubeチャンネル「犬と猫とわたし達の人生の楽しみ方」などを中心に、動物の保護活動にも力を注いでいる。2020年12月にはニール・サイモン作、三谷幸喜演出の舞台『23階の笑い』に出演した。今年5月にはエッセイ風小説を出版する。

撮影/塚田亮平
ヘア&メイク/林 達朗
取材・文/金澤英恵
構成/山崎 恵
この記事は2021年3月11日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

 

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