多くの物事に必ずしも因果関係はない


もう少し多くの人に理解しやすい例をとって、考えてみたいと思います。

 

ワクチン接種を受けた帰り道にタクシーに乗っていて自動車事故にあい、けがを負ってしまったという人の例を考えてみましょう。

この例でも、これまでの話と同様「ワクチン接種後にひどいけがを負った」ということになります。しかし、この例でも「ワクチン接種が原因でけがを負った」と考えるでしょうか。

たしかにワクチン接種のために出かけたことは原因の一部になったかもしれませんが、ワクチン自体がけがの原因になったわけではないことがご理解いただけるでしょう。

時系列的に偶然たまたま重なってしまっただけだ、と多くの方が考えられるはずです。

実は、病気でも同じことが言えます。

新型コロナワクチン接種後に、鼻水や喉の痛みが出て、風邪をひいたとしましょう。コロナワクチン自体は、「風邪」をもたらすものではありませんから、本当に風邪をひいたのだとしたら、それはよそからもらった別物であり、時系列的にたまたま重なっただけと考えるのが自然です。

このように、ワクチン接種後に何らかの体調の変化が起こったとき、それはワクチンが原因で起こったのか、ワクチンと関係なく起こったのかは必ずしも明らかではなく、ワクチンと無関係のことも多いのです。

この「不確かさ」を受け入れ、立ち止まることはとても大切です。

なぜなら、そこで考えなしに「このワクチンを受けて風邪をひきました、ワクチンはひどい風邪を起こします」と拡散してしまうと、そこに根拠がなくても人々が共有をし、それが多くの人の目に触れていくリスクがあります。

その情報によって、有効なワクチンで体を守る機会を失い、ひいてはその人が新型コロナウイルス感染症で命を落としてしまうことにもつながりかねないのです。