ある日お風呂に入っていたら、おっぱいにコロコロとしたしこりを感じたり、ふとした瞬間にチクチクとした痛みがあったり……。そんな時、ふと頭をよぎるのが「これって乳がん?」という不安です。女性の身体は月経のバイオリズムでも大きく変化するため、おっぱいの小さな異変に対して、「生理前だからかも」と自分を納得させがちかもしれません。でも、乳がんは、女性にとって決してめずらしい病気ではないことも事実です。

自分のおっぱいを自分で守るためにも、定期検診を受けているから大丈夫と過信せず、正しい知識・新しい知識を取り入れるようにしたいものですよね。そこで今回から全10回にわたって、乳腺専門医の緒方晴樹先生に、乳がんにまつわるたくさんの疑問について伺っていきます。まずは、乳がんのキホンの「キ」について詳しく教えていただきます!

 


1. 乳がんってどんな病気?
→女性の罹患率No.1の非常に身近ながんです。


乳がんは、5大がん(胃がん、大腸がん、乳がん、肝がん、肺がん)のうち、女性の罹患率第1位のがんです。国立がんセンターの統計によると、日本では年間9万人以上の女性が乳がんと診断されていて、育児世代かつ働き盛りの40〜50歳台にピークがあることも特徴です。

女性にとって最も身近な病気である乳がんは、乳房の「乳腺」にできる悪性腫瘍です。「乳腺」は、母乳をつくるための「小葉」と、その母乳を乳頭まで運ぶ細い管「乳管」で構成されていますが、乳がんはこの小葉と乳管の内側にある細胞から発生します。

 

さらに詳しく言うと、乳がんは、がん細胞が乳管の内側で止まっている状態の「非浸潤がん」と、がん細胞が乳管の壁を破ってしまう「浸潤がん」に分けられます。非浸潤がんは、原則としてわきの下のリンパ節や他の臓器に転移したりしません。一方の浸潤がんは、リンパの流れに乗ってリンパ節へ転移したり、血管を通じて骨、肺、肝臓といった遠い臓器へ転移する可能性があります。乳がんと診断された方の80%は後者の「浸潤がん」とされています。
 

2. 乳がんの主な症状は?
→しこりで気付く人が多数。ただし日本人は分かりにくい場合も。


乳がんになると、乳房に次のような症状が現れることがあります。

・硬いしこりができる
・乳房の一部の皮膚がへこんでいる、ひきつれている
・乳頭から出血する
・乳房の皮膚が赤く腫れて痛む(特殊な乳がんの場合)

乳がんが発見されるきっかけの90%はしこりだとされていて、自覚症状を訴える方が多いのも、やはりしこりです。検診では「定期的に乳房を触って確認しましょう」と指導されると思いますが、その「セルフチェック」によって違和感を察知し、来院される方も少なくありません。ただし、日本人を含む東洋人は皮下脂肪が少ない人が多いので、乳がんに関係なく、乳腺自体がゴロゴロと硬く感じる場合もあります。

乳房のしこりは80〜90%が良性腫瘍なので、乳房にしこりがある=乳がんとは限りませんが、しっかり調べるに越したことはありません。乳房に違和感を覚えたら早めに病院を受診するようにしましょう。

 
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