3. 乳がんがわかったら、どんな治療をするの?
→がんの「性格」をみて、さまざまな治療を組み合わせます。


乳がんの治療は、手術や放射線治療を行う「局所治療」と、薬物療法を行う「全身治療」を組み合わせて進めます。手術には、部分切除の「乳房温存手術」や全摘の「乳房切除術」、「わきの下のリンパ節に対する手術」などがあります。薬物療法は、「抗がん剤治療」「抗HER2(ハーツー)療法」「ホルモン療法」などですね。それぞれの詳しい説明はここでは省略しますが、覚えておいていただきたいのは、乳がんが最初にできた時から持っている特徴、言い換えれば「がんの性格」によって、治療の組み合わせも変わってくるということです。

がんに関する情報で、「ステージ」という言葉をよく耳にするかと思いますが、これは「病期」とも言って、がんがどの程度進行しているのかを表す物差しのひとつです。ステージは0、Ⅰ、Ⅱ(A・B)、Ⅲ(A・B・C)、Ⅳに分類されますが、乳がん治療においては、ステージは大まかな目安のひとつに過ぎません。ステージⅠでも抗がん剤治療と手術を行うケースもあれば、ステージⅡでも抗がん剤は使わず、ホルモン療法のみと手術を行う患者さんもいます。

このように、乳がんはステージそのものよりも「がんの性格の違い」に着目して治療を行っていくのが一般的です。そうした背景もあり、最近はステージⅠの状態でも「早期がん」という言葉は使わなくなっています。

 


4.乳がんを疑ったら何科で診てもらえばいい?
→乳がん治療は外科。「乳腺」の2文字があれば確実です。


乳腺外科、乳腺科、一般外科などの、外科の医師が診療している科です。「乳腺」と書いてあれば確実ですね。私もクリニックのホームページに掲載していますが、「乳腺専門医」という日本乳癌学会の資格を持つ医師がいる病院を調べて行くのもいいと思います。

女性の病気ということで、「婦人科じゃないの?」と思った方も多いかもしれませんね。乳がん検査を行なっている婦人科は確かに多いですが、乳がんを疑っていてより詳しく調べてほしい場合は「乳腺」や「外科」とついた病院を受診するのが正解です。ちなみに、婦人科で「乳腺専門医」を掲げている医師は、ゼロではないかもしれませんが、ほとんどいないのではないでしょうか。

乳腺外科や乳腺科は、地域によっては少々見つかりづらいかもしれません。その場合は「乳がん治療を一生懸命やっている先生」がいる大学病院や大きな病院の近くを探してみるといいと思います。乳がん治療は様々な病院と医療連携を行うことがほとんどなので、大きな病院の近くには個人でクリニックを開いている先生も多いはずですよ。
 

緒方晴樹 Haruki Ogata

目白乳腺クリニック院長。日本乳癌学会乳腺専門医・指導医。20年以上にわたり乳腺外科を専門とする。東京逓信病院では乳腺センター立ち上げに尽力、センター長として多くの乳がん患者の治療にあたった。2019年2月、女性が気軽に受診できる「乳がん検診・治療・フォローアップ専門クリニック」として、目白乳腺クリニックを開院。


取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

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第3回「【乳がん検診】マンモグラフィとエコーが片方ではダメな理由と病院の選び方」3月21日公開予定

 
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