おっぱいに痛みが出て病院を受診した際に、「乳腺症」と診断されることがあります。しかし、その実態についてよく理解できていない方も多いのではないでしょうか。ネットで「乳腺症」と検索すると、様々な「乳がん」関連の記事が上がってくるため、不安な気持ちを抱えてしまうことも。そこで今回は、乳がんと乳腺症の関係について、乳腺専門医の緒方晴樹先生に改めてお聞きするとともに、乳がんができやすい場所と正しいセルフチェック方法についてしっかり教えてもらいます!

 


前回記事
胸がチクチク、コロコロ...育児・働き世代を襲う乳がんの基礎知識>>


1. おっぱいが痛くて「乳腺症」と診断。これって乳がんになる?
→「乳腺症」はさまざまな症状をまとめた呼称です。

 

「乳腺症」は広い範囲の症状や状態を指して、十把一絡げにした俗称です。乳腺症と診断されたからといって、乳がんになる、または乳がんのリスクが高いということではありません。

検査結果から乳がんは認められないものの、乳房に痛みがあったり、エコー(超音波検査)で乳腺のパターンがヒョウ柄のように見える場合などに、乳腺症という診断がついたりします。中でも乳房の痛みを訴える方が多いですが、その原因は女性ホルモンの影響が考えられます。

いってみれば、「風邪」に近いかもしれません。風邪も、ウイルスが原因のこともあれば、細菌から感染から発症することもありますが、その原因までは調べませんよね。様々な症状から「風邪ですね」と一括りに診断するように、乳腺症も様々な症状から「乳腺症ですね」と一括りにすることが多いのです。

しっかりと検査を行った結果、医師が乳腺症と診断したなら治療は特に必要ありませんが、年1回の定期的な検診は行うようにしてください。


2. 乳がんは、おっぱいのどこにできるの?
→乳房のどこでも。また乳房以外にできることもあります。


乳房を丸く4つに分けて、上の外側4分の1のところにがんができやすいという数字はありますが、乳房のどこでも乳がんになる可能性はあります。

また、乳がんはひとつの乳房だけにできるものではありません。左右の乳房にできる「両側(りょうそく)乳がん」であるケースもあります。同時に見つかった場合は「同時性両側乳がん」といい、片方のがん治療後に元々異常が認められなかったもう一方にもがんが見つかった場合は「異時性の両側乳がん」といいます。

一度乳がんにかかると、もうひとつの乳房もがんリスクが高まると言われています。ですから、検査をする時は片方だけということは絶対にしません。両方同時に検査するのが鉄則です。

さらに、「副乳(ふくにゅう)」といって、乳房から外れたところにも乳腺ができることがあります。出産経験がある方なら、産科の先生から「副乳がありますね」と言われた方もいらっしゃるかもしれませんね。副乳は、人間が進化の道を辿ってきた、その名残のようなもの。その副乳にも、まれに乳がんが出来ることがあります。診断や治療は、通常の乳がんと変わりありません。

 
  • 1
  • 2