ミモレの連載で、住宅ローンの見直しについては、40代のうちに考えたほうがいい、ということをお伝えしました。とはいえ、50代や60代以降の方が「もう住宅ローンの見直しが間に合わない」わけではないのだそう。では、どんな方法があるのでしょうか。
住宅ローンのプロ中のプロであり、住宅ローンソムリエ®として活躍中の中村諭さんに、マネーコラムニスト西山美紀とマネー初心者の編集・片岡がお話を伺いました。

 

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西山:例えば50代、60代以降に教育費などが予想外にかかって家計が厳しくなり、「住宅ローンを見直したい」というご相談もありますか?

中村諭さん(以下敬称略):はい、ありますね。例えば、月々のローン返済が9万円ほどで、60歳で仕事が定年になり、「毎月の返済が厳しい」とご相談に来られるケースがあります。毎月の返済以外にも、例えばボーナス返済が30万円ほどある場合もあります。

西山:定年後は、月収だけでなく、ボーナスもなくなるのでローンがそのまま残っていると返済が大変ですよね。

片岡:窮地に陥りそう……。どういう対策があるのでしょうか。

中村聞いたことがあるかもしれませんが、「リバースモーゲージ」という方法があります。これは自分の持ち家を担保にして、将来的には家を売るという約束のもと、お金を借りる融資制度です。
契約者の方が亡くなった場合、相続人が現金で返済するほか、家を売却して売却資金を返済に充てることも可能で、そういった仕組みを利用します。

最終的には持ち家を手放す可能性が高いですが、契約期間中は、大切な家に住み続けられるというのが特徴です。

片岡:そんな方法があるのですね!

中村はい、持ち家がある方で、金融資産があまりなく、年金では生活費をまかなえない方向けに想定された制度です。

でも、そういった提案をすると、「リバースモーゲージって、家を取られてしまうんでしょう?」と怖がられることもあります。

片岡:確かに、そういう心配はありそう……。

中村でも先ほどのケースですと、60歳時点で、例えば8年間の返済期間が残っていて、毎月9万円ほどの返済と、ボーナス返済が30万円あったとします。マンションの場合は、ローン返済だけでなく、管理費や修繕積立金も毎月必要ですよね。

残り1200万円近くのローンがありますが、これを「リバースモーゲージ」にしてみるとします。「リバースモーゲージ」は、住宅ローンよりも金利が高いというデメリットがありまして、超低金利時代の現在でも3%近くになる場合もあります。

でも、ここがポイントなのですが、月々の支払いは「利息だけ」でいいのです。
ローン返済の場合は、「元金+利息」なのですが、元金の返済は、自分の好きなときでいい。8年間、「元金+住宅ローンの利息」として、返済が困難になるよりも、まずは利息を毎月返していき、20年かかってもいいので、元金をじっくり返していくという方法です。

西山:今は長生きの時代ですから、60歳から20年間たっても、「まだ80歳」という感じですものね。

中村そうなんです。これで、元金も無事に返済できて、ローンがゼロになれば、家を取られるということはありません。

先ほどのケースですと、「リバースモーゲージ」によって、毎月9万円ほどの返済が4万5000円ほどに下がり、ボーナス払いは0円。
返済期間は8年から終身のローンに変更した形になりますが、60歳以降で収入が減るなか、元金を自分のペースでゆっくり返していくことができます。

片岡:なるほど! それは安心ですね。