最悪のケースを避けるためには現金を確保

 

中村:実際に、離婚の件数は年々増えていますので、一つのリスクとして考えておきたいですね。
もちろん、住宅を買われるときは「気に入った家を購入したし、これから夫婦で力をあわせてローンを返済していこう」という時期ですので、離婚の話はなかなかしにくいですが……。

 

西山:ご相談に来られた方に、そのお話はやはりされるのでしょうか。

中村:そうですね、二人でローンを組む際に、離婚は最大のリスクといってもいいほどですから。
離婚した場合は、どちらかが家を出ていくことになりますが、男性が出ていくことが多いのではないでしょうか。ローンの返済額は、一般的には男性の方が多く払っていることが多いので、男性が支払いを続けてくれるかどうか、ということも問題になります。

「離婚するので、夫婦のローンを一本化してほしい」というご相談もありますが、一本化できるかどうかは、年収次第でもあります。

西山:もしローンを借りる際に、それぞれの年収にあわせたギリギリの上限額で借りていたら、ローンを一本化したくても、二人分の収入にあわせたローンを一人で組むのは無理、という可能性が高いわけですね。
といっても、ローンを一本化しないまま、男性が払ってくれなければ、最悪のケースでは自宅が差し押さえに……。

中村:そうなんです。また、ローンを組む際には、それぞれ相方の保証人になっているはずなので、片方が返済しなくなれば、金融機関から保証人の自分にも請求がきます。
万一相方が自己破産をしていたら、自分に請求が来て、その金額を支払えなければ家を失ってしまうだけでなく、自分自身も自己破産になってしまう可能性があります。それが、保証人になることの大きなリスクですね。

片岡:ものすごく怖い……。

西山:そう考えると、住宅ローンを組む段階で、年収ぎりぎり上限額で借りないことは非常に大切ですね。離婚をしなくても、身の丈を超えた大きなローンを組むことも危ないですし。

中村:はい、リスクとして考えるとそうなります。
その解決法として「預貯金を集めて頭金をたくさん入れて、ローン返済額を下げればいい」と考える人もいますが、実はこれも手元の貯蓄がなくなってしまうので、リスクがあります。

そのため、私がおすすめしているのが、「頭金として用意をするけれど、頭金としては使わずにとっておくこと」です。

片岡:どういうことでしょうか?

西山:頭金の現金を貯蓄としてしっかり持ちつつ、身の丈にあった金額でローンを組む、ということですね。

中村:はい、以前は「物件の2割くらい」を頭金として用意して、購入時の諸経費として物件の1割、あわせて「物件の3割を用意しましょう」ということが一般的に言われていましたが、私がおすすめしているのは、それくらいの金額を用意した上で、フルローンで借りるという方法です。

頭金として支払う予定だった物件の金額の2割を預貯金などでもっておけば、いざというときに返済の対応等ができますから。
例えば、住宅ローン減税が10年や13年使える方は、その時期が過ぎた後に、余裕があれば手元にあるその預貯金を繰り上げ返済に使ってもいいですね。

夫婦で住宅ローンを組む場合のリスクとして、どちらかの年収ダウンや万一亡くなった場合、離婚した場合などをお伝えしましたが、いずれもある程度の貯蓄があれば、乗り越えられることもあります。資金繰りとして考えると、貯蓄がしっかりあることは、やはり安心感があると思います。
 

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

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