人それぞれに初恋の思い出があり、「今、どうしているのかな?」とふと思うことがあるのではないでしょうか。『海月姫』『東京タラレバ娘』『偽装不倫』など、悩み多き女性の心の機微を丁寧に描き、ときには耳の痛いこともズバズバと作品に盛り込んでくる東村アキコさんの最新作『私のことを憶えていますか』は初恋がテーマです。

 


40歳のある日、洗濯物をたたみながら初恋の人を思い出した


数々の名作を生み出してきた東村アキコさん。最新作『私のことを憶えていますか』は、2020年4月から電子マンガサービス「ピッコマ」と、韓国のウェブコミック配信サイト「カカオページ」で、世界初の日韓同時週刊連載としてスタートしました。文藝春秋から紙版のフルカラーコミックも刊行しており、4月7日には3巻が発売されます。

物語の主人公はゴシップライターの遥(はるか)。昼夜を問わず働く中、憧れの俳優・SORAの熱愛が発覚。ショックを受けながら記事をまとめていたのは30歳の誕生日当日のこと。記事に載せるSORAの写真を見ていた同僚から、遥が好きになる芸能人は同じような系統の顔だと指摘されます。徹夜で仕事を終え、朝になって家に帰る道中、遥は小学6年生の時に好きだった「こうちゃん」が初恋の人で、歴代の好きな芸能人はみんな「こうちゃん」に似ていることを思い出します。当時、「こうちゃん」は小学3年生で遥よりも3歳年下。小学生で年下の男の子が好きだと知られたら同級生にからかわれるわ、自分も恥ずかしいわで絶対に知られるわけにはいきません。18年間も忘れたままだったのは自分の記憶に蓋をしていたからだったのです。

冒頭から切なさ全開ですが、長年忘れていた「初恋」を思い出すというストーリーは東村さん自身の体験から来たものでした。

「40歳のとき、洗濯物をたたみながら突然思い出しました。初恋のことはもちろん思い出のデータとしてはあるんだけど、その時の気持ちまでは思い出したことがなかったんです。私が小学6年の時に好きだったのはこうちゃんで、『あの子、引っ越しの日にうちに来たよね』とかどんどん思い出して……」

 


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作品の中でも、遥は「三十歳になってみれば3歳下なんて下でもなんでもないちょっと年下の男やんけーーーーーーッッッ」とのたうち回ったり、ネットで名前を検索する場面がありますが、これも実際に東村さんが体験したことだそう。

「私が好きになるK-POPアイドルはいつもこうちゃんに似た顔立ちだということも、この時に気づきました。3歳下の男の子が好きだなんて言ったらおかしいと思われるし、男の子にからかわれるから、みんなに嘘ついてたことも。今なんかK-POPにハマって15歳年下の男の子を追っかけてるというのに、3歳差なんて大したことない! ネットで検索してみたのですが、同姓同名がめちゃくちゃ多くて、見つけるのは無理だなと思いました」

 

そんな経験から、「いつか初恋のことを描こう」と温めていたという東村さん。韓国の「カカオページ」から連載の依頼が来てソウルでプレゼンをする時に、初恋を思い出した体験談を交えつつ、初恋をテーマにする作品を描きたいと熱弁をふるいました。

 
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