写真:マリンプレスジャパン/アフロ

テレビ朝日の夜のニュース番組「報道ステーション」がWeb上で公開したCMが各所から批判を浴びています。仕事帰りの女性が「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」などと画面に向かって話しかける内容です。

 

こうした炎上騒動が起きるたびに、その意思決定プロセスに多様な視点がなかったのだろうかと悲しくなります。あるいは多様なメンバーがいたとしても、「これってどうなんだろう?」と違和感を口にしたり、対案を検討したりする土壌がなかったのか……。しかし、違和感を口にするにもそれらを受け入れるには多様性がやはり重要で、いずれにしてもそうしたものが意思決定プロセスになかったのではないでしょうか。

このCMでは「ジェンダー平等」を「時代遅れ」と言っていますが、それが事実でないことは明白です。実際、コロナ禍が女性により大きな影響を及ぼしていることはさまざまなデータが示しています。

以下の表は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて日本における雇用者数がどのように変化したかを示したグラフです。オレンジが女性、グレーが男性です。女性のほうが落ち込みが大きく、特に昨年の3月から4月にかけては74万人も減少していることがわかります。男性の倍以上の落ち込みです。

内閣府男女共同参画局「コロナ下の女性への影響について」より

こうしたことの背景には、女性は男性に比べて非正規雇用で働く人が多い点が考えられます。「産業別雇用者の男女別・雇用形態別の割合」のデータを見ると、女性(濃い黄色)は各産業とも非正規雇用者の割合が男性に比べてあきらかに高く、特に、コロナ禍の影響を強く受けている「宿泊、飲食業」 「生活、娯楽業」「卸売、小売業」「医療、福祉」などの対面型サービスに多く従事していることがわかります。

内閣府男女共同参画局「コロナ下の女性への影響について」より

フルタイムやパートタイムなど多様な働き方の選択肢があること自体は素晴らしいことですが、それが性別と結びつき、定着していることに問題があります。こうしたことが男女の賃金格差につながっていきますし、コロナ禍を受けてDV相談件数や女性の自殺者数が増えている要因にもなっています。

 
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