女性の非正規雇用が多い背景には私たちの社会に横たわる根強い性別役割分業意識があります。男性が仕事をして女性が育児・家事をして……といったことです。たしかに女性の就業率の推移を見ると,男女雇用機会均等法が施行された1986年は53.1%だったのが、2016年の段階で66.0%と30年の間に約13%も上昇しています。働く女性の数そのものは増えています。しかしながら、多くは育児や家事との両立などもあり、非正規のパートタイム労働者というのが実情です。

ただ、こうした実情に対して変化も起きてきています。「働き方改革」により長時間労働を是正しようとする動きが生まれており、実際、残業時間の上限規制もされるようになってきました。男性の育児参加をうながす「男性育休」も、企業が対象の従業員に対し個別に周知し取得を後押しするように2022年4月から義務付けられる予定です。

また、コロナ禍においてはテレワークを実施している男性の家事・育児時間が増加しているというデータも出ています。

内閣府男女共同参画局「コロナ下の女性への影響について」より

こうした希望的な傾向はほかにもあります。コロナ禍は女性により大きな影響を与え、日頃から日本社会に横たわるジェンダーギャップを深めたわけですが、その影響を調査し、打ち手を講じるために昨年秋から内閣府の男女共同参画局に「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」が立ち上がっており、月1回ペースでの会合を重ねながら、提言を行い、女性支援の施策につなげています。

 

特筆すべきは、同研究会の委員は男女半数ずつでジェンダーの専門家や支援団体の人だけではなく、大学教授、エコノミストなどの多様なメンバーで構成されている点です。ジェンダー視点でのバランスの良さや多様な観点が「誰一人として取り残さない」施策の立案に生かされていることを改めて感じます。

地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」こと。これは、最近耳にする機会が増えたSDGsの大原則でもあります。一人ひとりの力を活かすサステナブルな社会をつくるために、ディスカッションの場、意思決定の場に多様な人が参画し、多様な意見を自由に発信することの重要性を、このコロナ禍で、世の中全体が再認識しつつあるといえるでしょう。

私自身は今年に入ってから取締役・監査役・執行役員などの女性役員を企業にご紹介する新たな取り組みにチャレンジしています。こうした取り組みを通じて、少しでも意思決定層に多様な眼を取り入れ、多様性を力に変える社会をつくっていければと思います。

社会課題の解決は誰かがやってくれるわけではなく、私たち一人ひとりの意識で、行動で変化を生み出し、よりよい方向へ進めていくしかありません。コロナ禍を受け、一人ひとりが多様性を発揮できる社会づくりへ向けて「私に何ができるかな?」そんなふうに思いをはせてみてもよいのではないでしょうか。

前回記事「「プラスの影響」も9割!コロナ禍で女性の働き方はどう変わった?」はこちら>>

 
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