ではなぜ、被収容者たちは精神的に追い込まれてしまうのでしょう? 原因は職員たちの日頃の態度にもあるようです。

 

入管では収容施設での看守や面会受付を受け持つ「入国警備官」と書類上の手続き全般を担当する「入国審査官」という2種類の国家公務員が働いていますが、織田さんは彼らの横柄さを特に問題視しています。

 

「被収容者のことを人間扱いせず、イジメなどを行っているのはこの入国警備官。また、被収容者を診る医師に先入観を吹き込んだり予算の制約を強調したりして、適切な治療の妨害などもする」

さらに、正規職員だけでなく外部から来た人材にも問題があるようです。

 

織田さんは驚くほど高圧的で、被収容者から忌み嫌われていたというある常勤医の態度をこうつづっています。

「『犯罪者、私の言うことが絶対だ。嫌なら国に帰れ』と、医者とは思えない発言を平気で繰り返し、時には本人の承諾もなしに無理やり点滴を打たれた。あるいは不要な直腸検査を強要、下半身を露出させて辱めるなど、被害の声は後を絶たない。
しかも制圧を先導し、自らも被収容者の体を押さえつけるなど、とても医者の行動とは思えない暴挙も行っている。抗議のハンストを続けて、長期収容によるストレスで摂食障害になった人も多い」

杓子定規な処遇が横行する入管では、女性のデリケートな問題も無視されてしまいます。

 

この状況を見かねて改善のために行動を起こす支援者もいますが、入管は彼らの厚意も突っぱねてしまうようです。

「『管理が面倒だから、送り返せ』と圧力をかけられたという話をよく聞く。しかし彼女(女性の被収容者)たちはお金がなく、自分たちで生活用品を買うのはたいへんで、ボランティアの差し入れを頼りとしている人も多い。
特に生理用品などは高いので、差し入れはありがたい。職員も同じ女性なら理解してほしいものだ。しかし自分たちの仕事が増えるのが嫌で『突き返すように』と言うらしい。長期収容のストレスだけでなく、こうした女性職員による仕打ちに耐えかねている人も多い」